あずまんが龍騎 ‐13 RIDERS‐
【仮面ライダーオーディソ】
【Episode 4】

「こんにちは、ちよの父です。
 前回の最後、君達に問い掛けた選択肢
 『Q この後神楽は……?』に対して君達が選択したのは……

 A 大阪の話を聞く

 久しぶりに再会した友人同士。だが、彼女等は何時かは戦う運命にある。
 それでも、彼女は友を信じる事を選んだ。
 果たして、その選択は正しかったのか……?
 では、その選択の先を見ていただこう……」



「なぁ、大阪……」
「なんやー? 神楽ちゃん?」

神楽は、恐る恐る話を切り出した。

「全部、説明してくれるのか?
 あの、化け物……モンスターの事とか、『仮面ライダー』の事とか……」
「当たり前やないかー 変な神楽ちゃんやなー」
「でも……『仮面ライダー』同士は……」

そこまで神楽が言ったところで、大阪が先ほどのような鋭い口調で被さるように言った。

「私は、『仮面ライダー』同士の戦いを止める為に『仮面ライダー』になったんや」

「戦いを……止める?」

予想だにしなかった言葉。
大阪が『仮面ライダー』になっているという事だけでも驚愕の事実なのだが、更にその上
それが本人の意志によるもの、という事がとりわけ神楽を驚かせた。
だが、大阪が少なくとも『仮面ライダー』になったのは、自分の願いを叶えるためではないことが解り
神楽は少し安心し、それと同時に、一時とはいえ、かつての友人を疑った事に対する罪悪感が芽生えた。

「(考えてみれば、大阪に人殺しが出来るわけないか……)」

そんな事を考えながら、神楽は昔の大阪を思い出していた。

大阪。 本名は春日歩。
大阪からの転校生だから、という理由で大阪というあだ名がついたらしい。
大阪は、ほんわかとどこかいつも抜けていて、いつも妙なことばかり考えていた。
忘れ物や授業中の居眠りも多く、内心神楽は少し呆れていた。

そんな面影を残しつつも、今、目の前にいる大阪は、明らかにあの頃とは別人だった。
瞳の中には、確かな、そして強い意志が見えた。
いつでもポカンと開いていた口も、今は堅く真一文字に閉ざされている。

その口が再び開いた。

「まず、神楽ちゃんはどうやってカードデッキを手にいれたん?」
「え……と、美浜士郎っていう変な生き物から貰ったんだ……ちよちゃんのお父さんって名乗ってた」
「そか……という事は、一通り『仮面ライダー』については知ってるわけやな」
「ああ、モンスターと戦う事、十三人いる事、ライダー同士で戦って勝ち残った一人が
 願いを叶えられる事……私が教えてもらったのはこれくらいだ」

「変身の仕方も知らんかったみたいやし……やっぱりその程度しか教えて貰ってなかったんやな」
「うん……渡されてすぐ、あのモンスターが出てきた、というより、けしかけられたのかな」
「そうやろな……無理矢理にでも戦いに巻き込むのが、あの人の目的みたいやからな
 ……だいたい神楽ちゃんの知ってる事は解ったわ。じゃあ、私が知ってる事は全部教えたる」

そういうと大阪は、ゆっくりと語り出した。
ミラーワールドのモンスター「ミラーモンスター」が人を食料とする事。
人を捕食する為に、ミラーワールドから現実世界へと出てくる事。
『仮面ライダー』にも、『契約モンスター』というミラーモンスターが一体ずつついている事。
『契約モンスター』に倒したミラーモンスターを食べさせる事によって、契約が継続され、契約モンスターが強化される事。
一定期間食べさせないと、自分自身に襲いかかってくる事。

そこまで語り終わると、大阪は一旦喋るのを止めた。

「なんか久しぶりに沢山喋って、ちょっと疲れてもうたー」

笑いながら呑気に言う大阪を見ながら、神楽も苦笑した。

「良くあれだけの事、覚えてられたなー」
「なんやー神楽ちゃん、私だってこのくらい覚えてられるわー」
「冗談だよ、ごめんごめん。
 ……そう言えば、大阪も美浜士郎からデッキを貰ったのか?」
「……いや、違うんや。 私は……」

と、大阪が再び話し始めようとした瞬間。二人の頭に、違和感が走った。
ガラスを引っ掻いたような、不協和音。
その耐えがたい感覚に、神楽は思わず頭を抱え込んだ。
だが、大阪は慣れた様子で、だが真剣な表情で言った。

「神楽ちゃん、モンスターが出たで」
「モンスターが出たって……今のがその知らせみたいなものなのか?」
「そうや、早く行かないと人が襲われるかもしれへん! 急ぐで!」
「あ、ああ!」

神楽達は廃ビルから出ると、辺りを見回し、モンスターの姿を探した。
不協和音はまだ鳴り響いている。音が鳴っている――という感覚がする――方へ向かう。
裏路地を駆け、襲われているであろう人間を探す。

居た。500M程先に、スーツ姿の中年男性が、ビルの窓ガラスの中から伸びている腕に引っ張られているのが見えた。
窓は閉まっているし、穴が空いているわけでも無い。
何よりその腕は、人間のものでは無い事が人目で解るほどの異形だった。
明らかに不自然な光景。だが、それがモンスターの仕業だという何よりの証拠である。

神楽達は駆けより、モンスターから男を引き剥がそうとする。
モンスターの方は、神楽達をライダーと解っているのだろうか、
分が悪いと思ったらしく、男を放してガラスの中へと消え失せた。

「早く逃げるんや!」

大阪に言われ、男はおぼつかない足取りで逃げ出した。

「さ、行くで神楽ちゃん」
「行くって、ミラーワールドにか?」
「決まっとる。あのモンスターを野放しにしておく訳にはいかへんのや。また違う人が襲われる。
 それに、神楽ちゃんの契約モンスターにもモンスターを食べさせないと、神楽ちゃんが食べられてまう」

「変身!!」

大阪はガラスの前でポーズを決め、ライダーへと変身した。
神楽もそれに続いた。

「変身!!」

「行くで、神楽ちゃん。戦い方は、実戦の中で教えたる」

言うが早いか、大阪はガラスの中へ飛び込んだ。
ガラスの一部がぐにゃりと歪み、大阪はガラスの中へ消えた。

「腹くくるしかないよな……ええい!!」

神楽は再び覚悟を決め、モンスターとの戦いの場へと赴いた。

静寂を保っていたミラーワールドに、二人のライダーが現われた。
神楽の変身した龍騎、そして大阪の変身したライアである。
二人のライダーは、背中合せになって、それぞれ反対側の路地の奥を注視している。

「何処から仕掛けてくるか解らへん。十分気をつけるんや」
「解った!」

その時、上方から、ガラスが割れる音がした。
それと同時に、沢山のガラス片と、一体のモンスターが落下してきた。
そして、長く伸びている鋭い爪を振りかざし、神楽と大阪に襲いかかった。
二人は、お互いに注視していた方の路地の奥へと跳び、モンスターを挟み撃ちする体勢を取った。

「逃がさへんで!!」

すかさず、大阪がカードをデッキから引き抜き、反撃を試みる。
しかし、モンスターは着地と同時に地面を蹴り、跳躍。ビルの屋上へと逃亡した。

「何だよ、あのジャンプ力……」
「とにかく、追うで!」

そういうと大阪は、デッキからカードを引き直し、バイザーに装填した。

『アドベント』

前回の戦いでも使用したカード。 モンスターを呼び出す『アドベント』のカードだ。
再び空から現われる、大阪の契約モンスター、エビルダイバー。

「エビルダイバー、私を乗せてあのモンスターを追いかけるんや!」

すると、エビルダイバーは大阪の元へと下降し、彼女をその背中に乗せた。
主人の命令に、忠実に従うエビルダイバー。
その姿に、神楽は、ある一人の少女とその愛犬の姿を思い出していた。

「って、私はどうやってあのモンスターを追いかければ良いんだ?」
「神楽ちゃんも、契約モンスターに乗せてもらえばええよ。
 モンスターを呼び出すには、『アドベント』のカードを、左腕のバイザーに装填すればええんや」

そう言われた神楽は、デッキからカードを引き抜いてみた。
引いたカードに描かれていたのは、燃え盛る炎を身に纏っている龍だった。
そして、カードの上に名前らしき物が記されていた。

「ドラグレッダー、か……」 

次に、左腕を見る。左腕には、龍の顔を模した手甲がついていた。
カバーらしき物をずらすと、カードの挿入口がそこにあった。
そして、恐る恐るカードを左腕のバイザーに装填し、カバーを戻した。

『アドベント』

突如、咆哮と共に、一匹の赤き龍が現われた。
威厳のあるその姿で、空を悠々と飛んでいる。

「立派なモンスターやなー。でも、エビルダイバーに比べたらまだまだやな」
「そうか? こっちの方が強そうだしカッコイイぞ?
 よーし!! ドラグレッダー! 私を乗せて飛べ!!」

赤き龍が、地上へと降りてきた。

ドラグレッダーとエビルダイバー、二体のモンスターが揃って舞い上がる。
眼下に広がるビル群の屋上、その一つ一つを見渡し、目標であるモンスターを探す。
暫く見回した後、一つのビルの屋上に二人が目を留めた。

「見つけた! あそこかっ!!」
「今度こそ逃がさへんで!!」

二人はモンスターから飛び降り、その勢いのままそこに居たモンスターに飛び蹴りを食らわせた。
モンスターは直撃の瞬間、僅かに後ろへ飛び退いた為、さしたるダメージは無い様だった。
それでも、モンスターの隙を作るには十分だった。
大阪が、その機を逃さず追い討ちをかける為、神楽に指示を出した。

「神楽ちゃん、カードを使って武器を呼び出すんや!」
「ええと……これか?」

神楽はデッキから一枚のカードを引き、バイザーに装填した。

『ソードベント』

お馴染みの声がバイザーから響き、ドラグレッダーが頭上に現われた。
そして、眩い光と共に、自身の尾に似た刀――ドラグセイバー――を神楽に与えた。

「刀か……よし、てぇりゃぁぁぁっ!!」

神楽はドラグセイバーを大上段に構え、モンスターに突進していった。
モンスターも爪を構え、向かってくる神楽を迎え撃つ体勢をとる。

神楽がドラグセイバーを振り下ろし、モンスターがそれを爪で防ぐ。
ドラグセイバーと鋭い爪が交錯し、火花を散らした。
力任せに、連続して斬りかかる神楽。紙一重で受けるモンスター。
一進一退の攻防が、このまま続くと思われた……が。

「キシャァァァァァッ!!」

モンスターが神楽が振り下ろした一撃を、受け止め、押し返す。
僅かによろけたその隙を突き、モンスターが爪を横に薙いだ。

「がっ!? うっ……」

神楽は、脇腹に走った鋭い痛みに耐えかね、思わず怯み、ドラグセイバーを落とした。
モンスターは勝利を確信し、獰猛な笑みを浮かべた。
だがモンスターは、決定的なミスを犯していた。

そう、この場にいる、もう一人の存在を忘れていた。

『スイングベント』

バイザーの声、そして風を切る鋭い鞭の音。
それが聞こえた時、既にモンスターは吹き飛ばされていた。

「余所見はあかんで、敵は神楽ちゃんだけじゃ無いってこと、忘れとったな!」

余裕たっぷりに言い放つ大阪。
そう、彼女は先程からチャンスを伺い、じっと待っていたのだ。
そして、モンスターが見せた一瞬の隙を突き、スイングベントのカードで召喚した鞭――エビルウィップ――で
モンスターを攻撃し、神楽のピンチを救ったのだった。

「サンキュ! 大阪!」

神楽は、大阪に礼を言いながら体勢を立て直し、立ち上がる。
一方、モンスターは未だに立てずに地に伏している。

「神楽ちゃん、今のうちに決めるんや。
 必殺技のカード、『ファイナルベント』を使って!!」
「解った!!」

『ファイナルベント』

ドラグレッダーが、三度空から現われた。神楽の元へと舞い降り、
そして、神楽の周りを螺旋状に回りながら、再び空へと戻っていく。

「はぁぁぁぁっ……たぁっ!!」

神楽も気合を込めて高く跳躍し、ドラグレッダーと共に空へと舞いあがる。
神楽は、自分の跳躍力の限界まで跳ぶと、空中でひねりを加えた回転をし、キックの体勢をとった。
その背後に佇むドラグレッダーが、神楽へ向かって炎を吐き出す。
炎を纏った神楽は、落下の勢いと炎の勢いを合わせ、力強くモンスターへとキックを放った。

たぁぁぁぁぁぁっ!!」

仮面ライダー龍騎の強力無比なファイナルベント「ドラゴンライダーキック」が、容赦無くモンスターを貫いた。


「よっしゃあ!!」

着地した神楽が歓声を上げ、同時にその場にへたれこんだ。
大阪が駆けより、労いの言葉をかける。

「やったな、神楽ちゃん。 良い戦いっぷりやったで」
「大阪も、危ないところで助けてくれてありがとな」

ふと、神楽は何かに気づき、呟いた。

「っと、忘れるところだった」

空に留まっているドラグレッダーに、神楽が声を掛けた。

「ドラグレッダーもありがとな。 
 腹減ってるんだろ? そこのモンスター、食べていいぞ
 私を食べられたら困るからな、ちゃんとモンスターを食べろよ?」

冗談を言いながら、神楽が自身の契約モンスターに呼びかける。
言っている事とは裏腹に、神楽はもうすっかり契約モンスターを信頼しているようだった。
そんな主人にドラグレッダーは何処か嬉しそうな声で吠え、モンスターの残留エネルギーを吸収した。

「さてと、それじゃあ戻るとするか!」
「せやなー、戦ってばっかりで今日は疲れたわー」

ミラーワールドから現実世界へ戻り、路地を抜けた二人。
そこには大きな公園があり、散歩している人や、遊んでいる子供達がいた。
二人は脇にあった小さなベンチに腰を降ろし、一息ついた。
暫く沈黙が続き、神楽が口を開いた。

「まるで嘘みたいだよな……
 こうやって、普通に沢山の人が生活してる裏で、あんな戦いがあるなんてさ」
「せやな……でも、それが現実や。 私達にとってはな」
「そうだな……」

二人は再び黙り、のんびりと空を見つめた。
白い雲が、ゆっくりと流れて行った。
やがて、神楽が口を開いた。

「私は、まだどうしたら良いか解らないけど……」
「神楽ちゃん?」

「大阪が戦いを止める、って言うなら、私もそうしようと思う。
 私もできるだけ戦いたく無いし……それに。
 大阪一人じゃ、戦いを止めるなんて出来ないだろ?
 私も力になるよ。 な、良いだろ?」

神楽の頼もしい言葉に、大阪が笑顔で応える。

「……ありがとう、神楽ちゃん」

「……そういやさ、他のライダーってどんな奴等なんだ?」

神楽が大阪に問いかける。
大阪は少し表情を曇らせ、迷いながらも、重い口を開いた。


「私が他に知ってるライダーは二人だけや。名前は、仮面ライダーナイトと仮面ライダーガイ。
 後の九人は、まだ会ったことも無い……」
「そうか、で、その二人はどういう奴なんだ?」

「……その二人は、高校で一緒だった人や……」

「な……! 嘘だろ……」
「本当や。二人とも、私が説得しても戦うって言っとった」
「で、誰なんだよ、その二人は!?」

「ナイトは榊ちゃん。 ガイは智ちゃんや」

「う、嘘だ……」
「いいや、本当の事や。 二人とも、間違い無く『仮面ライダー』や」
「榊……智……なんで……」

榊、そして智。
二人とも、神楽と大阪の高校時代の友人だった。
神楽は、大阪だけでなく、榊や智までライダーである事に愕然とした。

「理由は解らへん。二人とも何か複雑な事情があるみたいやった。
 とても、私じゃ止められそうになかったわ……」

そう言うと、大阪は寂しげな表情を見せた。
だが、次には強い意志を込めて、神楽に言った。

「でも、神楽ちゃんがいれば、神楽ちゃんと二人で説得すれば、もしかしたら……
 なぁ、お願いや、説得するのに協力して欲しいんや!」

神楽は大阪の言葉をしっかりと受けとめ、返した。

「ああ、もちろん協力するとも。
 ……二人とも、絶対に止めて見せる」
「神楽ちゃん!」
「戦いを止める為、力になる、ってさっき言ったろ?
 ……それで、まずはどっちを説得しに行くんだ?」
「せやな……まずは……」


……To Be Continued

「二人のライダーは、戦いを止める選択をした。
 だが、彼女等の友人は、戦いを続ける道を選んでいる。
 果たして、彼女等を説得する事は出来るのか?
 仮面ライダーナイトと仮面ライダーガイ。
 どちらのライダーを説得するか、選ぶがいい」

Q 先にどちらを説得する?

A 仮面ライダーナイト、榊
B 仮面ライダーガイ、滝野智

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