仮面ライダー
【MKAS】
【一文字隼人 仮面ライダー2号】

 一文字隼人…ショッカーという悪の組織に改造手術を施され、人間という存在ではなくなっ
 てしまった男…そして、その運命を受け入れ、仮面の戦士となって戦う事を決意した男……
 彼は…彼等仮面ライダーは…悪の組織と戦い続ける。
 たとえ自分の命が失われる事になろうとも…

ネオショッカー…その魔手は全世界に伸びていた。この国、インドも例外ではない。人々が
 たくましく生きているこの大地でも…確かに、悪の芽が芽生え始めていたのだ。
「ほらほら…笑ってごらん。ようし、いい笑顔だ。」
  カシャ
 カメラのシャッターが押される音がした。そのカメラを構えていた青年は、ゆっくりとカメラを顔
 から離し、ニコッと笑った。
「ありがとう。ほら、これはほんのお礼だ。」
 青年はポケットからチョコレートを2つとりだし、自分の被写体となってくれた少年達5人に手
 渡した。少年達は笑顔でそれを受け取る。
「ありがとう、隼人兄ちゃん。」
「おう、こっちこそありがとな。」
 隼人と呼ばれた青年はニッコリと笑ったまま振りかえり、そばに停めてあったバイクにまたがり、
 ヘルメットをかぶった。
「じゃ、またな。」
「絶対まて来てよ!」
「ああ、勿論だ。」
 青年は軽く手を振った後、その場をあとにした。
「…いい国だ。みんな必死に生きている…守らないとな、あの笑顔を。」

 そう、彼こそが一文字隼人、2人目の仮面の戦士である。かつてショッカー、ゲルショッカー
 を壊滅させ、それからも世界の為、人々の為に戦い続けているのだ。この世に悪のある限り、
 彼の戦いに終わりはない。
(最近、何もない荒野のような場所で…突然得体のしれない植物がはえたらしいな…行ってみるか。)
 何日か前の出来事だった。人が住めないような渇いた大地に、突如として見た事もないよう
 な植物が生い茂り、あっという間にそこはジャングルのようになってしまったというのだ。
(そんな事…自然に起きるとは考えられない。そして…そんな事ができるのは…)
 一文字はその事件の第1発見者がいるというこの街に立ち寄っていた。詳細な情報を聞いて、
 その日は夜遅かったので泊めてもらうと、子供達に懐かれた。今日は朝早くたつ事にしていた
 ので、記念にと写真をとってきたのだ。
「少し時間がかかっちまったな…急ぐか。」
 一文字は現場へと急行した。

 現場は既に、世界中からやってきた科学者達で溢れかえっていた。
「ふぅ……こいつはやりにくそうだな…」
 一文字はため息を吐きながらもヘルメットをはずしてバイクにかけ、ジャングルの中へと足を
 踏み入れた。
「参ったな…想像以上に広い。」
 一文字が想像していた以上に、ジャングルの敷地面積は広大であった。近くにいた日本人
 の学者に、この場所の敷地面積を聞いてみると、東京ドームと同じくらいの大きさがあるらし
 い事がわかった。彼はその学者に礼を言うと、ジャングルから離れ、近くに何か原因があるの
 ではないか、または組織のアジトでもあるのではないか、そう思って近辺の捜索をはじめた。
「しかし…やつらは何をたくらんでいるんだ?あんな物つくってどうする気なんだ…」
 疑問はつきなかったが…とにかく今は相手が何を企んでいるかを知る為にも、組織の人間
 を見つけ出す必要があった。

  ドルン!ドルン!
 一文字がジャングルから10km程離れた時だった。周辺にある岩陰から、黒い覆面で全身
 を覆った怪しい集団が、バイクに乗って現れたのだ。集団は一文字の周りを囲んだ。一文字
 はバイクを停車させ、黒覆面の男達に話しかけた。
「ほう…そっちからでてきてくれたか。探す手間が省けたな。」
「一文字隼人!ここで死んでもらう!」
「アリコマンドにやられる俺じゃない。」
 一文字はまた走り出した。それを追って、アリコマンド呼ばれた男達もマシンを走らせ始めた。
 まず、2台が一文字を左右から挟みこんだ。
「どぅお!」
 一文字はまず、左側についたアリコマンドの首筋に手刀で攻撃、アリコマンドはそのままバ
 イクから転げ落ちた。
「お前もだ。トオ!」
 更に右側についたアリコマンドの顔面に鉄拳を放ち、やはりアリコマンドは転げ落ちた。今
 度は前方から3名のアリコマンドが現れ、突っ込んできた。更に後ろからも2台のアリコマンド
 が突っ込んでくる。一文字は完全に挟み込まれた。
「くっ…本郷のようにうまくいくかわからないが……ドゥオオオ!」
 一文字はバイクを加速させ……フワリと浮かびあがり、前方から突っ込んできた3台を飛び越
 えた。次の瞬間、アリコマンド達の5台のバイクは激突、爆発して炎上した。

「退け!退け!」
 残った5名程のアリコマンドは逃走を始めた。が、それを黙って見逃す一文字隼人ではない。
「よし、やつらのアジトをつきとめてやる。」
 一文字は彼等の後を追いかけて行った。やがて、アリコマンド達は大きな川のある場所まで
 やってきた。一文字もしっかりとその後を追いかけている。
(俺がつけている事はわかっているはず…だとしたら罠か…)
 アリコマンド達は明かに一文字を何処かへと誘導しているようであった。一文字とて歴戦の
 勇者、それくらいは感づいていた。が、手がかりがない以上、彼等のあとを追いかけるしか
 他に手はないのだ。
「グオオオ!」
「!?」
 轟く咆哮、地面から姿を現す巨体、2mはあろうかというその生命体は、一文字の目の前に突
 然現れた。

「くっ!」
 一文字はバイクを急停止させて降りた。
「貴様は!?」
「俺はモグランジン!一文字隼人!ここが貴様の墓場となるのだ!」
 モグランジンはそう言い終わると、一文字に殴りかかってきた。一文字は慌ててそれを避け、
 後ろに下がった。
「くっ…」
 その巨体から、かなりのパワーを持っているであろう事がわかった。が、やはりその巨体だけ
 あり、動きはのろい。
「ようし……いくぞお!」
 一文字は両手を揃えて右に伸ばした。
「変身……」
 そして左側へと回転させつつ拳を握り、左手はたて、右手は寝かせた状態で制止させた。
「トオオオ!」
 一文字は大空高く跳びあがった。同時に彼の腰に巻かれたベルトが急回転し、彼の姿はみ
 るみるうちに異形の生命体へと変化していった…

「こい、一文字隼人!」
「フッ…今の俺は…仮面ライダー2号だ!」
 仮面ライダー2号は赤いマフラーをなびかせながら大空高く舞い上がった。そして空中で1
 回転、赤い右足をモグランジンへ向けながら突っ込んでいった。
「ライダアアアキイィィィック!」
 数多の怪人達を葬り去ってきた仮面ライダー2号の必殺技が、モグランジンを襲う。真紅に染
 まった右足が、モグランジンの胸部へとつき刺さる。
「があああああ!!」
 だが…
「俺は…その程度ではやられんぞおおお!」
「何!?」
「うがあああ!」
 モグランジンは、その強靭な胸板で、2号のライダーキックを弾き返してしまった。吹っ飛ば
 された2号は反転してなんとか着地したが、ショックは少なくなかった。
「馬鹿な…ライダーキックが破られるとは…」
 こういう事がなかったわけではない。だが、やはり自分が絶対の自信を持っていた必殺技が、
 こうも簡単に破られたという事はやはり大きなショックでもあり、相手が強敵であるという事を
 認識させられる事でもあった。

「グハハハ!俺はあのイカデビルを上回る強化細胞がある!ライダーキックもきりもみシュート
も通用せんぞ!1号との合体技でもあれば話は別だが…やつは今頃アメリカで血祭りにされて
いるはずだ!」
「…フ…フハハハ!」
「狂ったか2号ライダー!」
「あいつは…仮面ライダー1号はお前達にやられるような男ではないさ。そして俺もな。」
 2号ライダーは再び戦闘態勢をとった。2号の態度が気に入らなかったモグランジンは、怒り
 をあらわにした。
「偉大なるネオショッカーに逆らう愚か者どもめ!仮面ライダーは全員、我々に倒されて死ぬ
のだ!いくぞ2号ライダー!」
 モグランジンは勢い良く2号へと突撃してきた。2号は全く同じないまま、それを受けとめた。
「何!?」
「いくぞ、ライダー!きりもみシュートッ!」
 2号はそのまま、150kgはあろうかという巨体を頭上で回転させ始めた。まさにその勇姿は、
 ”力の2号”の名に相応しい姿である。常人には目にもとまらないくらい高速で回転させられ
 たモグランジンは抵抗もできなくなっているようだ。

「トオオオ!!」
 2号は大空高くモグランジンを放り投げた。黒い巨体が宙を舞い、緑の戦士がそれを追う。
「ライダアアアキイィィック!」
 2号はモグランジンの顔面にライダーキックを放った。赤い右足がモグランジンの黒い顔面に
 見事に強打し、モグランジンは落下していった。
「ドゥオオオ!」
 更に追い討ちをかけるように追撃する2号ライダー。空中前転で激しく回転し、そのままモグ
 ランジンへと突っ込んでいく。
「ライダアアア!回転キック!」
 急回転によって、威力を増したライダーキック、ライダー回転キックがモグランジンへと炸裂
 した。そう、一つ一つの技では怪人を倒せないが、連続的に必殺技を繰り出す事によって、
 怪人を倒そうという作戦だったのだ。
「ガアアアアアアア!!!?」
 地面に強く叩きつけられたモグランジン。彼はゆっくり…起き上がろうとしたが…
  バタン!」
 そのまま地面へと伏してしまった。
「はぁ…はぁ……ふぅ…どうやら勝ったみたいだな。」
 ホッと安堵する2号、だが…

「バナアアア!」
「!?」
 倒れこんだモグランジンを眺め、どうしようかと悩んでいた2号へ、濁った液体が水鉄砲を発
 射するように飛んできた。2号はサッと身を避けたが、その液体が地面へ付着すると、付着し
 た表面がただれて溶け崩れた。溶解液である。
「誰だ!?」
 2号は溶解液がとんできた方向へ目をやった。そこには、植物の形をした怪人が立っていた。
 両手は鞭のようになっており、それをクネクネと奇妙にうねらせながら、怪人は2号の方を睨
 みつけていた。
「ケケケ…俺はフラワージン、2号ライダー、俺が貴様を倒す!」
「フラワージン…そうか、貴様があのジャングルを作った張本人だな。」
「そうだ…あのジャングルにある植物は、今俺がだしたような溶解液を吐き出す…あれを街で
発生させて…人間どもを皆殺しにしてやるのだ!」
「そうはさせん、いくぞ、ドゥオオオ!」
 2号ライダーはフラワージンへ向かって跳んだ。が、フラワージンは2号ライダーとやりあおうと
 はせず、モグランジンのほうへととんだ。
「?どうした?戦う気がないのか!?」
 2号がフラワージンのほうを向いて叫ぶ。フラワージンはクククッと低い声で笑いながら、足元
 で倒れているモグランジンを見ていた。
「ククク…見せてやろう、このフラワージン様の能力を!」
 そう言い放つと、なんと…フラワージンはツルのように細長くなり、モグランジンの口の中へと
 進入していったのだ。

「な…にぃ!?」
 さすがの2号も驚きを隠せない。
「ククク…そう…俺は違う生命体に寄生し、寄生した相手の力を何倍にも高める事ができるのだ!」
 モグランジンの背中がバッサリと裂けた。そして、大きな花びらが現れた。
「くっ……モジャモジャと気色悪いな。」
 2号は少し圧倒されてしまったが、こんな事で退く訳にもいかない。とにかく一刻も早く、ネオ
 ショッカーの企みを阻止せねば、あの子供達の笑顔が失われてしまうかもしれない。
「トオ!」
 2号は軽く跳んでパンチを放った。
「甘いぞ仮面ライダー!」
 モグランジンは両手を2号へ向けた。すると、彼の指からいくつもの触手が伸び、2号の両手
 両足に巻きついたのだ。
「何!?」
「死ねえええ!」
 モグランジンは更に、口からも触手をだし、2号の体に巻きつかせ、全ての触手の力を全開に
 して2号を締め上げた。
「ぐ…あああ…!」
 体全体が鋭い悲鳴をあげている。さしもの2号ライダーも、先ほどモグランジンと戦ったばかりだ。
 フラワージン操るモグランジンと戦うのは、かなり骨が折れる事である。

「ククク…貴様はここで死ぬのだ!」
「ぐ……そうは…いかないぜ!ドゥオオオ!」
「!?」
 2号は、腕の辺りに巻きついていた触手を掴み、思い切り引っ張った。触手は必死に抵抗した
 が、力の2号の圧倒的なパワーには敵わず、無理矢理引き千切られてしまった。
「な、何!?」
「ライダーチョップ!」
 更に、真紅の手刀を振り下ろし、首の辺りに絡んでいた触手、胴元に絡みついていた触手
 を切り落とし、しゃがみこんで足にからみついていた触手を掴んだ。
「ドオオオッ!」
 そして、無理矢理触手を引き千切ったかと思うと、そのまま遠心力を使ってグルグルと振りまわ
 し始めた。
「ぬ…おおおお!?」
 モグランジンは全く抵抗できない。その巨体を何度も持ち上げたり振りまわしたりするのは、2
 号といえどもかなりの重労働だ。しかし、彼は弱音を吐くわけにも、諦めるわけにもいかない。
「トオオオ!」
 2号は近くにあった岩石めがけ、怪人をぶん投げた。勢い良く激突するモグランジン、そして、
 それに寄生していたフラワージンも、ダメージも共有しているようだ。

「く…貴様…なんの為に戦うのだ!?我等ネオショッカーに協力すれば…いや、ショッカーに
協力していれば、大幹部となって世界を支配する事だってできたはずだ!」
「…そうかもな。だが…俺は……仮面ライダー2号だ。俺はショッカーの敵…そして…人類の味
方。あの日から…あの男と出会ってから、そう決めたんだ。」
 2号ライダーの…一文字隼人の脳裏に、遠き地で今も悪の敵として、人類の味方として戦っ
 ているであろう仲間達の顔が思い浮かんだ。
「俺は…俺達、仮面ライダーは!貴様達のような者を憎む!」
「く…うおおおお!」
 フラワージンは最後の賭けにでたようだった。モグランジンの体のいたる部分を裂き、触手を
 無数に発射し、更に口からは溶解液を消防車のホースから流れ出る水のような勢いで発射
 したのだった。いくつもの邪悪な塊が、赤きマフラーをなびかせる戦士へと迫り来る。

「トオオオ!」
 彼は赤い両足で大地を力強く蹴った。大空高く跳びあがった正義の戦士は……空中で卍の
 形に体を曲げ、そのままスピンしながら、動物と植物が合体した異形の生命体へと向かって
 行った。赤き右足が風を斬り裂き、更に自分ヘとむかってくる幾つもの触手をぶちきりながら、
 それを操る本体へと向かって行く…
「ばかなあああ!?」
「ライダアアアア!まああああんじキイィィィック!」
 今、渾身の力を込めた一撃が炸裂した。モグランジンの体を貫き、それに寄生したフラワー
 ジンをも砕く必殺の一撃……理論では説明できないだろう。あえていうなら…根性で、不屈
 の闘志をもって……それを打ち破ったといえるだろう。本来なら砕けないはずのモグランジン
 の体は、2号ライダーの怒りと悲しみを込めた一撃によって破られたのだ。
「がああああああああ!!」
  ドカーン!」
 凄まじい爆煙と爆音を轟かせ、ニ体の怪人は爆死したのだった…
 怪人は倒した。だが、これで全てが終わった訳ではない。あのジャングルをなんとかしなけれ
 ば…一文字はまたバイクにのり、この近くにあるであろうネオショッカー基地の入口を探し始
 めた。
「…守らなくちゃな。あの…子供達の笑顔を。俺達が…そうだろ?本郷。」
 一文字は、遠き地の親友に語りかけていた。

 仮面ライダー一文字隼人は改造人間である。彼を改造したショッカーは、世界征服を企む
 悪の組織である。
 ―力を望んだ訳ではない。しかし、力を与えられた引き換えに人としての未来を奪われて…
 ならば戦おう。
 この赤い両手は、悪を砕くためにある…
 仮面ライダーは、人類の平和を守る為、悪と戦い続けるのだ。

【MKAS】
【完】

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