あずまんがー龍騎!
【あずまんがー龍騎!】
【第34話 : 立ち込める暗雲】

高層ビルが立ち並ぶ街角の車道の真上にそれは存在していた。
モンスターを生み出すコアミラーが。
ちよにデッキを与えられたライダー達の破壊目的であるコアミラーが。
そこに静かに存在していた。

勿論そこは人が生の営みを繰り広げる現実の世界ではなく、現実の世界と重なるように存
在するミラーワールドの話ではあるが、そのコアミラーを中心にミラーワールドの空間が
歪み始めた。コアミラーが自身を維持する為のエネルギーを供給させる端末、モンスター
の生産を始めたのである。空気が凝縮し、光が集まり、そして…モンスター達が構成され
始める。

「…」

その過程を黙って見つめる1人のライダーの影があった。翼ある巨大な立方体から明らか
に人間とは異なる生物、モンスターが生産されるという非現実的な過程にも関わらず、ぴ
くりとも反応しないことからこの過程に慣れていることがわかる。ところが出現したモン
スター達を見るやそのライダーは困惑した声をあげた。

「シアゴ―スト…馬鹿な。早すぎる…」

影の脳裏にミラーワールドでモンスターと戦い続ける仮面ライダー達の姿が浮かび、再び
押し黙った。

―ヴ…フェ…ヴ…フェ…

シアゴ―ストと呼ばれたモンスター達は静寂の中を聞く者達全てを不安にさせる奇妙な声
で鳴き続けた。全体的に白っぽく、丸みを帯びたシアゴースト達の身体からは妙に何かの
幼虫を連想させた。そんなシアゴ―スト達の観察をやめて再びコアミラーに視線を向ける
と影はぽつりと漏らした。

「急がねば…」

影の周囲を金色の羽が舞い、次の瞬間に姿が消えた。シアゴ―スト達とひびが入ったコア
ミラーを残して…



「いやな雨ね。しつこいったらありゃしない…」

ぽつりぽつりと降っていた小雨が本格的に降り出し始めた頃、ゆかりは街中から放課後の
学校の中へとふらふらと歩いていった。学校の廊下を歩いていたゆかりを真っ先に発見し
たのは仮面ライダーライアでもあり、ゆかりと古くからの付き合いがある体育教師のみな
もであった。廊下をふらふら歩くゆかりに近づくとみなもは怒り出した。

「あ、いたいたゆかり。あんたねー昼休みにいきなりいなくなったりしちゃ駄目でしょ!
 もっと教師として自覚を持ちなさい。ホントにもう!」
「にゃも…」

顔をあげてみなもを見つめるゆかり。と、その顔が険しくなった。先程のタイガとの戦い
で出来た背中の傷が再び痛み出したのである。勿論ゆかりと長年付き合っているみなもが
その表情を見逃す訳もなくすぐにゆかりの右肩にうっすらと滲んでいる鮮血と怪我に気が
ついた。

「ちょっと!ゆかりどうしたのよその怪我!」
「あーこれ?…ちょっとね」
「いいから早くこっち来なさい!」

みなもはゆかりを引っ張って学校の保健室に入った。

「ほらゆかり、座って上着脱いで」

椅子にゆかりを座らせ救急箱を取り出すみなも。体育の教師だけあってこういう怪我は日
常茶飯事なのだろう。みなもの対応は実に手馴れていた。テキパキとゆかりの怪我の手当
てを始めるみなもにゆかりは抗議の声をあげた。

「!!…ちょっとにゃも、もう少し優しく出来ないのー?」
「そ、そんなに痛かった?」
「これだからにゃもは結婚を乗り遅れるのよー」
「それはあんたも一緒でしょ!」

みなもは消毒薬を塗りこんだガーゼを力いっぱいゆかりの傷口に押しつけた。

「…いでででで!!」
「…よしっと。これで終わったわ。」
「ねえみなも」

包帯も巻いてもらい、洋服を着たゆかりはみなもに向かって1つの提案をした。ライダー
としての宿命である戦いへの誘いを。

「どうしたの?あらたまったりなんかしちゃって?今日もご飯を食べに来るわけ?」
「ううん…今から私と戦ってくれない?」

みなもはゆかりの顔を見つめた。視線がぶつかり合い、どうやらゆかりが本気だというこ
とを知るとみなもはため息をつきながら返事をした。

「…いつかそう言ってくると思ったわ」
「へ?」
「どうせゆかりも最後の1人になれば何でも願いが叶うって聞いたんでしょ?」
「…うん」
「最後の1人になるってことは…それまで人を殺し続けることなのよ」
「わかってるわよそれぐらい。私だってそれぐらいの覚悟は出来てるわ」
「ゆかり…あなたはどうして…どうしてそんなにライダー同士で戦おうとするの?」

ゆかり、みなも、木村の3人は強制的にミラーワールドに連れて行かれ、元の世界に戻る
為に士郎の言葉に従い一時的にライダーになったにすぎない。つまりゆかりにも自分と周
囲の人を守る以外に戦わないという選択もあった筈である。

「…しかったのよ」
「え?」
「…羨ましかったのよ」
「羨ましい…?」
「そ。榊みたいに走れたら、神楽みたいに泳げたらどんなに楽しいかなっていつも思って
 た。」
「…」
「知ってる?ライダー同士の戦いに勝ったライダーは負けたライダーの長所を吸収出来る
 んだって。」

だからこそリュウガはタイガの振り下ろされたデストバイザーに凄まじい反射神経でタイ
ミングよく拳を当てることが出来たのであろう。

「…!!だから…だからあなたは戦いを選んだっていうの!?」
「悪い?」

自分にないものを得る為に他者からそれを奪い取る。ゆかりの戦う理由を知ったみなもは
激怒した。

「悪いに決まってるでしょ!」
「…にゃもならそう言うと思ったわ。だから戦いたいの」
「…どうしても戦うことを選ぶのね」
「そだよ。…んじゃ、戦おっか」

どこかに遊びに行くような雰囲気でみなもをライダー同士の戦い、それも旧友同士での戦
いに誘うゆかりの声は無邪気な、だが残酷でもある子供のそれであった。

(…!!ゆかりはわかっていない…人を殺すということがどれだけ重いことなのか。ここで
 私が止めないとゆかりはこのままライダー同士で戦い続ける…きっと…死ぬまで)
「…わかったわゆかり。今から戦ってあげる。そのかわり1つだけ約束して。」

雨の音だけが響く中、ライダーの宿命の闇に囚われたゆかりを助ける為にみなもは1つの
提案をした。

「私が勝ったら、ライダー同士で戦うなんて、もう絶対に駄目よ。わかったわね。」
「…考えとく」
「「変身!」」

重なる2人の声。雷鳴が轟き、保健室の窓ガラスに閃光が入った。閃光は紫毒の牙ベノス
ネーカーを従える王蛇に変身したゆかりと、真紅の翼エビルダイバーを従えるライアに変
身したみなもを照らし出した。2人はお互いにしばらく見つめあっていたが、次の雷鳴を
合図に保健室の窓ガラスからミラーワールドに突入していった。

『ライアと王蛇の戦いか…』

士郎は薬品が保管されている棚から王蛇とライアが消えていった窓ガラスを見つめた。

『確かめる必要があるな…』

その手には最後の仮面ライダー、オーディンのデッキが握り締められていた…

雨の中のライアと王蛇。戦うには狭すぎる保健室からグラウンドに移動した二人は背中を
向けると黙って離れ始めた。やがて王蛇はカードを取り出し装填した。次いでライアもカ
ードを装填する。

《ソードベント》
《スィングベント》

片や金色の突撃剣ベノサーベルを手のひらに打ちつけながらプレッシャーを与えようとす
る王蛇。

片やエビルダイバーの身体の一部でもあるしなやかな尻尾を武器に具現化したエビルウィ
ップを手に持ち地面に叩きつけてその威力を音で威嚇するライア。

だが、2人は一向に動こうとしなかった。

「…」

しばし雨音だけがミラーワールドを支配したが、やがて意を決した王蛇が両手を広げなが
らライアへと無言で飛び込んでいった。そんな王蛇にライアはエビルウィップを幾度も打
ち付けたが一向に怯まずに王蛇はライア近づくとベノサーベルで斬りつけた。

―ガキィィィン

両手でエビルウィップを握り締めたライアはすかさずベノサーベルを絡めとると身体に振
り下ろされかけた一撃を防いだ。

「にゃも私の為に死んでちょーだい!」
「あんたねぇ…そんな簡単に死ねないわよ!!」

ベノサーベルとエビルウィップの均衡状態にイライラした王蛇はライアを蹴り飛ばした。
空中で態勢を立て直したライアは、着地すると同時に再びエビルウィップを振り下ろす。
襲い掛かるエビルウィップをべノサーベルで払いのけながら王蛇は再び間合いを詰め始め
た。

「にゃもあんた中々やるわね!でもこんなもんじゃあ…無駄よ無駄!」

ライアはエビルウィップを大地に叩き落としながら突撃する王蛇を見て、エビルウィップ
では対処出来ないと判断するや腕に装備されている契約モンスター、エビルダイバーを象
ったエビルバイザーにカードを装填した。

《コピーベント》

「ん?…ちょっとそれって私の武器じゃない!にゃもあんた何やったのよ!」
「秘密よ!」

ライアは王蛇のべノサーベルをコピーし、手に握り締めるとそのまま王蛇と接近戦を始め
た。

斬りつける王蛇。
払いのけるライア。

一合、二合とべノサーベル同士が火花を散らした。このぶつかりあいはいつまでも続くよ
うかのように見えた。しかし、体育教師であるライアと英語を教えている王蛇では同じラ
イダーと言えど元々の基礎体力が違う。肩で息を始めた王蛇は焦り始めた。

「だー!!もう!少しくらい当たんなさいよ」

王蛇はライアにべノサーベルをがむしゃらに振り降ろした。ライアはこの隙だらけの王蛇
の行動を見逃さず、王蛇の攻撃をかわしつつ頃合や良し、と判断するとライアは一瞬で王
蛇の背後から背中を蹴りつけてると同時に地面に横たわった王蛇のべノサーベルを持って
いたべノサーベルで遠くに跳ね飛ばした。

「私の…勝ちね」

ライアは王蛇の背中を足で押さえつけながらべノサーベルを王蛇の顔の近くの地面に突き
つけた。

「どう、あんたも少しは頭が冷めたかしら?」
「私をどうするつもり?」
「何もする訳ないでしょ!…ほらゆかり、帰るわよ。」

ライアはべノサーベルを大地から抜いて足をどけると、王蛇に向かって手を差し出した。
王蛇は座り込んでしばらくライアの差し出された手を見つめていたが、やがてゆっくりと
その手をとった。

「…へーい」

―やはり…こうなるのか…

立ち上がると王蛇は頭を冷やす為か、軽く頭を上下左右に振った。校舎へと目指して歩い
ていく間二人とも喋ろうとしなかったが、最初に口火を切ったのはライアだった。

―仕方が無い。ならば…

「…ゆかり、さっきの約束は覚えてるわよね?」
「な、何のことかしらー」
「とぼけないで。もう他のライダーを襲ったりしちゃ駄目よ」
「…わかっ」

《ソードベント》

王蛇がライアに返事をしようとした時。ライダー独特のカードをバイザーにベントインす
る音が聞こえた。運動場を見回すライアと王蛇の視覚に運動場の一角から近づいてくるラ
イダーが金色の羽と共に見えてきた。そして…二人の前に最強にして最後の仮面ライダー
であるオーディンが現れたのである。神々しく、2人に運命の宣告を伝える為に…

「仮面ライダー王蛇…ライアよ…」

王蛇とライアは立ちはだかるように運動場の一角から現れた新たなライダー、仮面ライダ
ー、オーディンを見て立ち止まった王蛇は手を振りながらやる気の無い声を出した。

「あんた何の用?悪いけど、戦いたいんだったら他にあたってちょうだい。あー疲れた。
 早く帰ろう。にゃも」
「ゆかり駄目でしょ!そんな態度じゃあ…でも、そうよねー。ごめんなさい。他を当たっ
 てくれるかしら?私達は…ライダー同士ではもう戦わないの」
「…」

オーディンは2人の言葉を黙って聞いてたが、やがて運命の宣告をした。

「選ぶが良い…友の命か、己の命かを」
「!?」

そう言うとオーディンは金色の羽を残して王蛇とライアの背後をとると手にした2つの金
色の刃、ゴルドセイバーで王蛇とライアを斬りつけた。

「きゃあ!」
「いったー…こんにゃろー!」

王蛇はライアより先に立ち上がると一気にオーディンへと加速した。しかしオーディンは
またしても金色の羽を残して消え、王蛇の背後から斬りつけた。オーディンに翻弄される
王蛇を見つめながらライアは焦った。タイムリミットを知らせる粒子の放出が始まり、グ
ランメイルの強制解除までの時間が残り少ないことに気づいたからである。

《ファイナルベント》

「にゃも!あんたもぼーっとしていないで手伝いなさいよ!!」
「ぼーっとしてて悪かったわね!!」

だが、ライアはそのことをおくびにも出さずに王蛇と一緒にファイナルベントを発動させ
た。

《ファイナルベント》

彼方より飛来するエビルダイバーとベノスネーカー。

「どりゃーーー!!」

王蛇はオーディンを自身の契約モンスター、べノスネーカーの猛毒の力を蹴りに込めて相
手に炸裂させるベノクラッシュの標的にして飛びかかった。

ライアも飛来したエビルダイバーの背に乗った。それと同時に加速するエビルダイバー。
凄まじい速度で相手に激突するライア最強の技、ハイドベノンが今オーディンに向かって
いった。

2つのファイナルベント。避けようの無い破滅。だがオーディンは冷静に王蛇とライアを
見つめながらゴルドバイザーにカードをベントインした。

《ガードベント》

次の瞬間。王蛇とライアは信じがたい出来事に遭遇した。オーディンがゴルドシールドで
ライアのハイドベノンを受け流し、王蛇のベノクラッシュをその金色の盾で全て防ぎきっ
たのである。

「…」

あまりの出来事にファイナルベントが終わったあとも王蛇とライアは口が開けなかった。
しかしもしどちらかが口を開けたならば言ったであろう。ある言葉を。

―勝てない

と。

《ソードベント》

再びゴルドセイバーを握り王蛇とライアに近づくオーディン。そして同じ言葉が王蛇とラ
イアの耳に響いた。

「選ぶが良い…友の命か、己の命かを」
「あんた馬鹿じゃねーの?どっちも大切に決まってるでしょ!」
「私も…選べないわ」
「ならば…お前達はここで終わりだ」

オーディンは再び姿をかき消して王蛇とライアの背中にゴルドセイバーを振り下ろした。
そのオーディンの強烈な一閃を受け、王蛇とライアは地面に倒れこんだ。

「さらばだ」

地面に倒れふした2人の背中にゴルドセイバーが情け容赦なく振り下ろされたその瞬間。

「動かないでください」
「お前は…」
「どうやら間に合ったみたいですね」

そう、疾駆の角メタルゲラスを従える仮面ライダーガイこと木村がオーディンの両腕を背
中からメタルホーンで押さえつけていたのだ。

「木村先生!」
「やれやれ…助かったですなにゃも!」
「ここは僕に任せてゆかり先生とにゃもは戻ってください!」
「にゃもって呼ばないでください…木村先生は?」
「早く!!」

ガイの叫びを聞いた王蛇は躊躇していたライアの腕を掴むと同時に脱兎の如く駆け出した。

「何故無駄な抵抗をする?」

ガイに背中を押さえつけられながらも冷静に問うオーディン。

「…あなたに勝ち目が無いことくらいわかってますよ。しかしあの二人は昔からの同僚で
 ね。あのまま黙って見過ごす訳にはいかなかったんですよ。」
「ならばお前も…ここで終わりだ」

ガイの拘束をあっさり引き剥がすとオーディンはゴルドセイバーを構えた。ガイはデッキ
からカードを一枚取り出し

「元気で…」

と言い残すと肩のメタルバイザーにカードを装填した。

《ファイナルベント》

大地から現れたメタルゲラスの両肩に足を固定させたガイは、手に装着してあるメタルホ
ーンをオーディンに向けた。

突進するメタルゲラス。
空気を切り裂くメタルホーン。
発動するヘビィプレッシャー。

そんなガイとメタルゲラスにオーディンは、ゴルドセイバーを振り下ろした…

「やれやれ〜助かったですな〜」
「…」

現実へと帰還し、グランメイルが解除され軽い脱力感の為その場に座り込むゆかりとみな
も。だがみなもは再び強い意志を備えた瞳でゆかりを見つめるときっぱりと言い放った。
「行くわよゆかり!」

ゆかりもみなもを見つめ返した。

「え〜!今度行ったら絶対死ぬわよ」
「それでも…木村先生を放って置けないわ」
「…死ぬことになっても?」
「ええ」

きっぱり言い放つみなもにゆかりはやれやれといった感じで笑った。

「にゃもが言い出したら聞かないのは知ってるわよ…わかった。んじゃ行こっか」
「ゆかり…ありがとう」
「気にしないでいいわよ…今夜は焼肉ね♪」
「却下」

「「変身!」」

「来たか…」

王蛇とライアがミラーワールドのグラウンドに辿り着いた時。そこには横たわったガイと
2人に振り向いたオーディンが立っていた。王蛇とライアの目の前でグランメイルが強制
解除される木村。

「木村先生!!」
「おーい、大丈夫かぁ?」

ライアに支えられながら王蛇の呼びかけに木村は声を振り絞った。

「無事でよかった…マイワイフと娘に伝えてください…いつまでも…愛している…と…」

木村はそう言い残すと王蛇とライアを見つめながら静かに消え去った。メタルゲラスのカ
ードだけを残して。

「木…村…先生…!!」

ライアはしばしガイのいた場所を見ていたが、立ち上がると同時にカードをベントインし
た。

《スウィングベント》

ぼさぼさ頭の挙動不審者で突然大声を出すことが多々あった。
女子高校生が好きらしくみなもの体育の授業によく参加した。

「はぁ!」
「無駄だ…」

だが、そんな木村が給料日に一万円を募金しているところを目撃し。
初詣で木村が世界平和を祈っていたことを知った時。
みなもは驚いた。彼の善意に。優しさに。

「あなたは…許さないわ!」
《コピーベント》

コアミラーを守らされた夜、ゆかり、みなも、木村は珍しく3人で飲んだ。
自分の身と他人を守る為だけに変身しようと言う木村に賛成したみなもは、
ゆかりが黙っていたその時からこの日を危惧していた。そして木村も。

《アドベント》

『もしゆかりが同じ人間同士で戦うようになったら…止めるのを手伝ってくれませんか?
 木村先生』
『勿論ですとも!』

振り下ろしたエビルウィップを奪われ
握り締めたゴルドセイバーを跳ね除けられ
召還したエビルダイバーを吹き飛ばされても
ライアは諦めなかった。

自分達を助ける為に自らの命を捧げてくれた木村の代わりにオーディンに一矢報いたかっ
たから。自分達を巻き込んだ運命に負けたくはなかったから。

《ファイナルベント》

ライアがエビルダイバーに飛び乗ろうとした瞬間。オーディンもまた既に動いていた。狙
い済ましたゴルドセイバーがミラーワールドで戦う仮面ライダーの最大の特徴にして弱点
であるカードデッキを突き刺し…グラウンドに骨が砕けるような嫌な音が響いた。

―パキィン

デッキが砕かれたライアは呆然と自分のベルトに視線を向け。
グラウンドに突っ伏した。

「にゃも!!」
「やられちゃった…」
「大丈夫!まだ間に合うわよ!」

止める間もないライアとオーディンの一瞬の戦いの結末。メタルゲラスのカードを拾った
王蛇は、辛うじてグランメイルを身に纏っているみなもを背負うと急いで現実世界に帰還
した。何故かそんな王蛇を黙って見送りオーディンはそのまま姿をかき消した。

「…にゃもーしっかりしろー」

保健室のベットにみなもを寝かせたゆかりは隣に座ると心配そうな顔でみなもを見つめた。

「私は…もう駄目みたい…ゆかり…この子を…使ってあげて…」

みなもはゆかりの手に一枚のカードを差し出した。そのカードはライアの契約モンスター
エビルダイバーを召還するアドベントカードだった。

「…死んだら恨むわよー」
「さっきまで殺そうとしてたくせに…それより…さっきの約束…忘れちゃ駄目よ…」

『私が勝ったら、ライダー同士で戦うなんて、もう絶対に駄目よ。わかったわね』

「…うん。わかった」
(よかった…これでゆかりは…もう…大丈夫ね…)
「ゆかり…ライダーの運命に負けないで…ね…」
「………にゃもぉ」

そう言い残すとみなもはまぶたを閉じた。動かなくなった旧友を呆然とゆかりは見つめ続
けた。窓の向こうでは暗雲がいつまでも雨を降らした。冷たく、静かな雨を…

【仮面ライダーガイ、ライア、死亡。残るライダーはあと―10人】

【次回予告】

「やれやれ…ライダーは朝もゆっくり出来ないのか」
「…智がまともなことを言うなんて珍しいな」
「だってよみちゃんを信頼しているからあんな戦いが出来るんやろ?」
「おい、智…ありがとな」

【生き残らなければ真実も見えない。ライダーよ、生き残るために戦え!】

【あずまんがー龍騎!】
【第35話 : 信じる力】

【Back】

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【あずまんが大王×仮面ライダー龍騎に戻る】

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