あずまんがー龍騎!
【あずまんがー龍騎!】
【第40話 : 戦いという名の激突(後編)】

「いってーーーーー」

最大時速930kmを誇るライドシューターの激突はナイトを、ミラーワールドからディメイション
ホールへと吹き飛ばすには十分な威力だった。グランメイルを襲うあまりに強烈な衝撃に絶句しな
がらもナイトは立ち上がって、ディメイションホールにダークバイザーを突き刺し、理不尽な攻撃
への反撃を開始した。

「このままやられっぱなしのともちゃんじゃないぞ!!」

闘志を燃やしながら音もなく現れたライドシュータに乗り込んでナイトは電源を起動した。

ライダーの呼び声に ライドシューターが目を覚ます。
光で 音で 振動で ライダーの荒ぶる心を昂ぶらせ
燃えあがる魂と共に ライドシューターは光となる!

ディメイションホールを駆け抜けるナイトのライドシューターとディメイションホールに突入して
きた王蛇のライドシューターは、ディメイションホールとミラーワールドの境界線で叫びながら交
差した。

「お返しだー!!」「りゃー!」

ナイトのダークバイザーが王蛇のグランメイルに振り下ろされ、王蛇がベノバイザーで受け止める。

「そうこなくっちゃ!」

モンスターとの戦いでは得られなかった昂揚感に、王蛇の理性と友人との約束は忘却の彼方に吹き
飛んでいった。

ライドシューターを反転させてナイトを追撃する王蛇。
再び接近しあうライドシューター。

両者は互いのライドシューターで体当たりを繰り返しながら、火花を散らしてさらに加速していった。

《ソードベント》

ミラーワールドを走り続けながら王蛇は、べノサーベルで情け容赦ない攻撃をナイトのグランメイ
ルに振り下ろす。ナイトも負けずにダークバイザーで王蛇に反撃してはいたが、王蛇のライドシュ
ーターが加速したり減速したり右に曲がったり歩道を走ったりする王蛇の運転技術に翻弄されて徐
々に防戦一方になっていった。

「そりゃ!そりゃ!そりゃりゃりゃあ!!!!」
「くけーーーっ!」《ファイナルベント》

遂にストレスが頂点に達したナイトは、奇声をあげながらライドシュータからダークウィングを呼
び寄せた。

「キュィィイイイイ!!!」

超音波にも似た声を発しながら主のもとに駆けつけたダークウィングは、加速を継続している主の
ライドシューターを発見して困惑した。

「キュイ?」「キューちゃんこのままで行くのだ!」「…キュー」

人使いが荒いなーとか心の中で思いながらも、ダークウィングはナイトの指示通りライドシュータ
ーを引っ掴むと必死に空を飛び始める。王蛇はナイトのライドシューターがダークウィングによっ
て徐々に空中高く持ち上がっていくのを見て目を白黒させた。

「げ!あんた正気!?」「へん!悔しかったらここまでおいでーだ!」

ナイトは地上を走り続ける王蛇を挑発しながら、ダークウィングの翼に身を包むや目標に向かって
高速回転で貫くファイナルベント、飛翔斬のGOサインを送った。

「キューちゃんやっちゃえー」
(こいつはまじでやばいわね!)《ファイナルベント》

何とか翼を広げてライドシューターを包み込んだダークウィングは通常の2倍ぐらいの速さで王蛇
の真上に落下していく。その巨大な物体に身の危険を感じた王蛇は咄嗟にファイナルベントを発動
させた!

「いい加減そのはさみを放せ!」

ゾルダは肘鉄で何度もボルキャンサーに喰いかかったが、ミラーワールドのモンスターの中でダン
トツの頑丈さを誇るボルキャンサーは平気な顔でどんどんミラーワールドを歩き続けた。やがて…
砂浜が見えてきたところでゾルダを放り投げるとボルキャンサーは主の後ろに下がった。

「ったく…何がしたかったんだよ、あのモンスターは?」「よみさんお久しぶりです」

砂浜から立ち上がってゾルダはグランメイルに付着した砂を振り払っていたが、今まで見たことも
ない仮面ライダーの出現に身体を緊張させた。

「…誰だおまえ?」「わたしは…あなたと同じ仮面ライダー、シザースです」

シザースが恭しく挨拶するのを聞きながら新たなライダーを観察していたゾルダは、シザースの手
に先ほどのモンスターとの共通点である鋏を発見して腰に装備しているマグナバイザーにゆっくり
と手を近づけた。

「さっきのモンスターはおまえのモンスターだな?」「ええ、よみさん」「…で、何の用なんだ?」
「ライダーがライダーを呼び出す時…答えは1つですよね?」

ゾルダは独自でずっとミラーワールドの由来、ライダーの存在意義を調べ続け、ちよが隠していた
戦いの宿命も、士郎の魅惑の誘いも知っていた。その中でゾルダはずっと以前にライダーとして決
心していた。仲間達と共に歩むことを、予測される障害物は己が取り除くことを。マグナバイザー
の照準をシザースにあわせてゾルダは続きを答えた。

「…それは戦いの始まりだ!」「ふふふ…」

次々と飛んでくるエネルギー弾を避けようともせずに突進してくるシザースにゾルダは舌打ちする
と接近戦に備えた。

《ストライクベント》

マグナホーンがシザースバイザーを押さえ込みゾルダとシザースは反対側の手で相手の顔を殴りつ
けた。

「ぐっ!」「きゃ!」

短い声をあげて再び拳を振り上げるゾルダとシザース。今度はどちらも無言で殴りあった。しばし
続いた拳の応答はゾルダの蹴りで中断され、シザースのカードで再開を約束した。

《ストライクベント》

シザースの右手に巨大な鋏、シザースピンチが装着された。ゾルダはマグナホーンを投げ捨てると
その約束を2門の大砲で破棄した。

《シュートベント》

「…カードがたくさんあるよみさんが羨ましいな」

シザースはゾルダの両肩に装着されたギガキャノンを見つめて心底羨ましそうに呟いた。シザース
のもち札は3枚。それに対してゾルダの持ち札は6枚。カードで戦況を変えることが出来るライダ
ー同士の戦いでは持ち札が多ければ多いほど有利と言える。だが、ゾルダは人差し指を軽く振りな
がらシザースに応えた。

「いや…そうでもない。所詮カードだ。こんなものがいくらあっても使えなければ意味がない」
「そうですか?」「そうだ!」

ギカキャノンが交互に火を吹く。さすがに用心しているのか縦横無尽に走り回って避け続けるシザ
ース。そのシザースの動きを予測してゾルダもどんどん角度を変えながら強烈なエネルギー弾を次
々と砂浜に飛び散らしていった。

「だれか、たーすーけーてー」「ヴ…フェ…ヴフェ ヴフェ」

ベルデは唯一自由に動かすことが出来る足をじたばたと動かしながら助けを求めた。シアゴースト
達はその間も仲間が待つコアミラーへと急いだが、天高く振り下ろされたドラグセイバーによって
中断された。

「うおおりゃああ!!」

ドラグセイバーに込められた気迫は、寸分違わずにベルデを拘束していた糸を切り裂いた。自由の
身になるやベルデは自分を担ぎ上げていたシアゴースト達を拳で吹き飛ばして龍騎にお礼を述べた。

「神楽ちゃん、助かったでー」「気にすんなって!」

未練がましそうに包囲網を築くシアゴーストに2人を背中をあわせて襲い掛かるシアゴーストを撃
退していたが、やがて龍騎が一喝した。

「おまえら、とっとと帰りやがれ!!」

ところがその龍騎の言葉に疑問を感じたベルデは思わず振り返って尋ねた。

「…?神楽ちゃん、モンスターをやっつけたほうがええんとちゃう?」
「あー…ちょっとな、そういうわけにはいかないんだ」

苦笑する龍騎に納得出来ないベルデだったが、未練を振り払えずに再び襲い掛かってきたシアゴー
ストに拳を閃かした。ところが不思議なことにシアゴーストを狙った拳は、間に割り込んだ龍騎に
よって受け止められいた。

「え?神楽ちゃん…どういうことや?」「あー…よし、大阪!まずはここから離れるぞ!!」

龍騎はドラグセイバーの柄の部分で自分にまとわりついていたシアゴーストを気絶させると、ベル
デの手を引いてその場を後にした。それから数分後。シアゴーストの気配が消えたことを確認した
龍騎は無数のダンボールが積み上げられている工場で座り込んだ。

「ふーっやっと振り切ったか」「…せやな」
「でさ、大阪にお願いがあるんだけど…モンスターと戦わないで欲しいんだ」

龍騎の言葉に動きを止めるベルデ。その様子に気がつかず龍騎は言葉を続けた。

「モンスターだって、人を襲う理由があると思うんだ」「…」
「だから…」

―出来る限り人を襲っているモンスターを止めることだけにライダーの力を使ってくれ

「神楽ちゃん」

龍騎の言葉は最後まで言うことが出来ずにベルデによって中断された。少しむっとしながらも龍騎
はベルデに問い掛けた。

「なんだよ大阪?」「…ほなら、私と戦ってくれへんか?」
「!? は、はは…冗談きついぜー」「…」

龍騎は笑いながらベルデの肩をばしばし叩いていたが、動きを止めて一歩後ろに下がった。

「ホントか!?」
「…そうや。私は別にモンスターじゃなくても戦ってくれるなら誰でもええんや!」

《ホールドベント》

バイオワインダーを伸ばしながらベルデは龍騎に一歩踏み出す。再び龍騎は一歩後ろに下がった。
踏み出すベルデに下がる龍騎。ベルデは疑問を口にした。

「神楽ちゃんどうして逃げるんや?」「おまえ…自分が言っている意味がわかってるのか!?」
「私をバカにしたらあかんで神楽ちゃん。私はな、ずーっと前から他のライダーと戦ってみたか
 ったんやー」

ベルデはオーディンが言い忘れ、バイオグリーザが教えてくれたことを述べた。

「それに…戦いに勝ったらどんな願いでもかなうんやって。だからみんなを倒したあとにまた生き
 返らせればいいんとちゃう?」

ベルデの返事にうなだれる龍騎。戦いという選択を選んだかつての友人を目の前にして、龍騎は搾
り出すような声になった。

「大阪、おまえはバカだよ…大バカ野郎だよ…」「あ、神楽ちゃんまた私をバカにしたー」
「うおおおおお!」

叫びながらドラグセイバーを持って駆け寄る龍騎とは反対に、ベルデはバイオワインダーを投げつ
けてからは素早く工場内の無数にあったダンボールの山々の中に身を隠した。

「大阪、出て来やがれ!」

龍騎の言葉を無視してベルデはバイオワインダーを投げつけては違う場所に移動し、再び攻撃する
というヒットアンドウェイを冷静に続けた。ベルデの冷たい攻撃の前に成す術もなく倒れ伏す龍騎。
ベルデは動かなくなった龍騎を遠くから観察していたが、気絶したと判断して龍騎の前でしゃがみ
込むと別れを告げた。

「ばいばい神楽ちゃん…」
《アドベント》

ベルデのバイオワインダーが龍騎のデッキに落ちるより先に、龍騎が最後の力を振り絞ってドラグ
レッダーを呼び寄せた。ドラグレッダーの尾で叩き飛ばされたベルデは飛び去っていく龍騎をいつ
までも見つめていた。

「あれー?あいつどこ行ったんだ?」

ナイトは破壊の限りを尽くした歩道のどこにも王蛇を見つけられず首を傾げた。もっとも引き際を
知っている王蛇はすでにエビルダイバーのファイナルベント、ハイドベノンでとっくの昔にミラー
ワールドにいなかったりする。そんなことを露知らずしばし探索していたナイトはいつのまにやら
ベルデとシザースが戦っている最中の砂浜に来ていた。

「ん…!! おーいよみー」「来るな!」「え?どうしたの?」
「仮面ライダーナイト!! …今日のところはこれぐらい、か…」

いつにないゾルダの厳しい言葉に思わず怯んだナイトだったが、それでも駆け寄ってくる。そのナ
イトの姿を発見したシザースもまた息を呑んで次の状況を予想するや、戦いを断念した。

「…よみさん、また会いましょう」

風に乗って飛んできたシザースの声に油断なく周囲を見渡すゾルダ。だが、既にシザースの姿はな
く、かわりに駆けつけたナイトが何をしていたのかとゾルダに尋ねてきた。

「何してたんだ?」「別に…いつもどおりモンスターと戦っていたんだよ」

同じライダー同士で戦っていたとことを何となく言いそびれるゾルダ。そんなゾルダをじっと見つ
めながらナイトは口を開いた。

「ふーん…大丈夫?」「まぁな…そう言うおまえはどうなんだよ?」
「ライドシューターで仕返しした!」「そ、そうか良かったな」

胸を張って先ほどの王蛇との戦いを自慢するナイトにゾルダは苦笑しながら砂浜を歩いていたが、
それを発見するやナイトの前に手をやって足を止めさせた。

「それでさー そいつがやたらめったら斬りつけてくるから怒って…」
「…しっ!智…何かいる!」「え?」「あそこだ」「ん…?」

ゾルダが指差す方向をしばし凝視するナイト。やがてそのフォルムがかつて己を助けてくれた人物
と一致してすぐにゾルダに告げた。

「…なんだ。あれって神楽じゃん」「なんだと!?」

慌てて走りよるゾルダ。そこでゾルダは動かない龍騎を見つけて狼狽した。

「おい!神楽!目を開けろ!!」「おーい神楽しっかりしろー」
「…」
「まずいな。連れて帰るぞ。おまえも手伝え」「へーい」

龍騎の右側をゾルダが、左側をナイトが支えながら2人は龍騎を連れて砂浜を歩き出した…

【次回予告】

士郎はシザースの意図を尋ねた。
「今日も大変やった。 …ふあー」
「ちょっと考えごとしていてさ、わりぃわりぃ。で、何の話なんだ?」
《スチールベント》

【戦わなければ生き残れない!】

【あずまんがー龍騎!】
【第41話 : 奪うもの、奪われるもの】

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