あずまんがー龍騎!
【あずまんがー龍騎!】
【第41話 : 奪うもの、奪われるもの】

見つけた。
あの人だ。
私をこんな運命に巻き込んだ人。
私を眠りから目覚めさせた人!!

シザースは士郎に飛びかかった。奇襲は成功した。シザースバイザーを喉に当
てられ、いつ喉を掻っ切られてもおかしくない状況の中、士郎はシザースの意
図を尋ねた。

「何の真似だ?」「士郎さんにお願いがあるんです」「…」
「…もっとカードをもらえませんか? このままだと他のライダーに勝てる気
 がしません」

シザースの言葉は実際のところもっともな話であった。

シザースピンチを呼び寄せるストライクベント
ボルキャンサーを召喚するアドベント
ボルキャンサーの力を解放するファイナルベント

この3枚しか持たないシザースは、先程のゾルダとの戦いで自分があまりにも
不利な状況にいることを再認識して士郎を襲撃したのだ。士郎は黙ってシザー
スに1枚のカードを掲示した。

「そのカードを私に?」「そうだ」「…効果を知らないんだけど?」
「ライダーが持つカード全てを奪える、スチールベントだ…」「凄ーい!」

「STEAL VENT」と書かれたカードには禍々しい手が描写されている。シザース
は記憶にないカードに戸惑っていたが、説明を聞いてスチールベントを受け取
ると拘束したまま士郎に礼を述べた。

「ありがとう!」
「チャンスは1度。よく考えて使うがいい…」

士郎も士郎で拘束されたままシザースに警告した。次の襲撃時期を考えながら
シザースは士郎とミラーワールドを後にした…

ベルデは龍騎がドラグレッダーの背中に乗って逃走したのを契機に、見たこと
がないバイオグリーザに「海」を説明していた。

(…そのウミというものは大きい水溜りなのか?)
「んー ちょっと違うで。海はな、塩味でどこまでもつながっているんや」
(塩味?どこまでもつながっている?)

次から次へと押し寄せるバイオグリーザの質問に遂にベルデは実物を見せるこ
とに決めた。

「ほなら、明日一緒に海に行こうか?」(本当か!? …こほん、いいのか?)
「私の海より広い心で約束するで」(海より広いココロ!?)
「タコとかも住んでるねん」(タコ!?)
「明日が楽しみやな」(…まあ、な)

内心小躍りしそうなバイオグリーザに手を振って大阪は別れを告げた。

「今日も大変やった。 …ふあー」

今日1日の疲労が急に訪れたのか、大阪は涙目になりながら小さなあくびをし
ていたが、正面から走ってきた女性とぶつかって中断した。

―ドンッ!

「ふえ?」「きゃ!!」
「…ごめんなさいー」「あ、いえ 私がうっかりしていたんです!」
(どこかで見た顔や…)

慌てて頭を下げる女性に既視感にも似たものを感じとった大阪は記憶を辿った。

(大学…ではない…中学でもない…高校…そうや!)
「千尋ちゃん?」「あ、あれ大阪さん!? それに憶えていてくれたんですか!?」
「もちろんや」

千尋は自分がぶつかった相手に驚き、その相手が自分を憶えていてくれてこと
にさらに驚いた。

「憶えていてくれたなんて大阪さん…とっても嬉しいです!!」
「それは良かった。 …千尋ちゃんはどうしてここに来たんや?」
「私は…よみさんの家に行く途中なんですけど…」
「そうなん?でも、よみちゃんの家って確か…あっちやで?」「あうー」

反対方向を指差す大阪を見て千尋はがっくりとうなだれた。

「とほほ。ありがとう大阪さん…」「あ、千尋ちゃん」
「今度ゆっくりお話してくださいね!」
「千尋ちゃん、そっちちゃうでー」
「…ううー」
「一緒に行く?」
「お願いします…」

千尋は後光が差して見える大阪に手を合わせると、2人はよみの家に向かって
夕暮れの街並みを歩いていった…

―私をバカにしたらあかんで神楽ちゃん。私はな、ずーっと前から他のライダ
 ーと戦って みたかったんやー

―戦いに勝ったらどんな願いでもかなうんやって。だからみんなを倒したあと
 にまた生き返らせればいいんとちゃう?

―ばいばい神楽ちゃん…

「うわああああ!! ……ん?どこだここ?」

先ほどの戦いに眠っている間もうなされ続けた神楽は安息とは程遠い休息から
目覚めると、自分がベットの上で眠っていることに気がついた。部屋を見渡す
とベットの他には机ぐらいしか見当たらない質素な部屋である。見慣れない部
屋に不安を感じていた神楽に突然窓を開けて見慣れた姿が侵入してきた。

「ここはよみの家だー 神楽、もう大丈夫なのか?」「大丈夫って?…っ!」
「まだ起きたばかりなんだ。無理をするな」

神楽は自分の身体を走る激痛に声も出せずに苦悶する。そんな神楽を諭すよう
に部屋の主が扉を開けて入ってきた。

「あ、よみ」「おまえ、また窓から入ったな」「うん」「やれやれ…」
「応急手当はしたが、痛むようだったら病院に行ったほうがいいぞ」
「そっか。この包帯はよみが巻いてくれたのか。サンキュー」

腕に巻かれた包帯や、顔に貼られている絆創膏にそっと触れ、神楽は改めてよ
みにお礼を述べた。照れたのか、そっぽを向いたよみを智がちゃかした。

「い、いや そんな大したことはやっていないぞ」
「よみが照れてるー照れよみだ」「照れてない!」「またまたー」

よみの肩を激しく叩く智を見ている間に、自然と神楽の顔に笑みが浮かんでい
た。悠久の時をこれからも仲良く過ごしていく2人の姿を想像できたからであ
る。だが、それと同時に力に魅入られてしまった1人の友人を思い浮かべ、よ
みに呼ばれていることにしばらく気がつかなかった。

(大阪…)
「おい…おい神楽」
「…あ、ああ」「大丈夫か?」
「ちょっと考えごとしていてさ、わりぃわりぃ。で、何の話なんだ?」
「その傷を負わせた相手についてだ」「…」

神楽はよみの質問に下を向くと黙り込んでしまった。神楽の態度によみは視線
を窓に向けて、智に目で指示した。

(おまえは帰れ)(えー なんでー?)
(いいから帰れ)(ちぇー… あとで話してよ)

「あー!! もうこんな時間じゃん!私見たい番組があったんだ!よみ、神楽お
 やすみー」
「また明日な」「お、おやすみ」

窓を開け颯爽と智が過ぎ去っていくのを確認したあと、よみは机の椅子に座っ
て、正鵠を射た。

「大阪と戦ったのか?」「!? な、なんでよみがそれを知ってるんだ!?」
「やはりそうか…」

戦った相手のことを押し黙った神楽の態度が誰かを庇っていると感じてよみは
考えた。庇っている相手とは、身近な存在なのではないかと。先ほどの戦いで
はちよと榊はリュウガに連れられていき、智は王蛇と、己はシザースと戦って
いた。そうなると身近な存在で残っているライダーは…大阪だけ。

「…あいつは昔からなにを考えているのかさっぱりわからん面があった。そう、
 気に病むな」
「なんでだよ…なんで大阪と戦わなくちゃいけないんだよ…!!」
「大阪がライダー同士で戦うという選択を選んだからだ」

冷静に分析するよみに神楽はかっとなって怒鳴りつけた。

「じゃあ 智が戦うことを選んだらよみは智と戦えるか!?」
「…ああ 例え智が相手でも挑まれれば私は戦う…デッ…」
「よみ…おまえも…おまえもなのかぁ!!!!」

神楽の悲痛な叫びは部屋を満たして消えていく。肩で息をしながら睨みつけて
いる神楽に、よみは中断された言葉を静かに告げた。

「…デッキだけ破壊してミラーワールドから放り出せば命に支障はない」「…」
「戦いを選んだ者には私は容赦しない。それが智相手でもだ。一瞬でも躊躇え
 ば命を消される。それが…ライダーの戦いだ」

よみの返事にうなだれる神楽。再び身体を襲ってきた痛みに徐々に意識を失い
ながらもよみの返事に同意した。

「私だって…わかっていたつもり…だったんだ…」
「神楽…」「…」「…寝たのか?」

返事がない。ただのしかばねのようだ。

…というわけではなく、神楽の寝息を確認したよみは布団を敷き、まぶたを閉
じてこれからの戦いの予測に耽ていった…

「ここやー」「ここが… やっと着いたー」

すっかり日が暮れた街中で、目的地まで一緒に着いて来てくれた大阪に千尋は
素直にお礼を述べた。

「大阪さんありがとうございます!」「気にせんでええでー」
「じゃあこれから行ってきますね!」「あ、千尋ちゃん」「はーい…!!」

今にも駆け出しそうだった千尋を呼び止めると大阪は黄緑色の光で千尋の息を
飲ませた。

「そ、それはなーに?」
「…千尋ちゃんもライダーやろ?」「ライダー?なにそれ?」
「とぼけてもむだや。よみちゃんの家を聞いた時の千尋ちゃんの目が、私と同
 じ目やったんや」

ライダー同士で戦うことを選んだ瞳は同じ仲間の嘘をあっさりと見破った。千
尋は迷ってはいたが黄土色の光は取り出さずに大阪に尋ねた。

「…ライダーだったとしたら、なんでしょう?」
「千尋ちゃんと戦ってみたいんや」「やっぱり…」
「…ライダー同士は戦う運命や」
「そうなんだけど、今日だけは大阪さんとは戦いたくないなー」「なんでや?」
「だって大阪さん、私のことを憶えていてくれたんだもん…」

千尋が淋しそうな笑顔で応えた理由に、大阪は黄緑色の光をゆっくりとポケッ
トの中に戻した。

「…ほならいつ戦ってくれるん?」「…明日なんてどうです?」
「あー 明日は予定があるんや」「…それならあさっては?」
「わかった。あさってやな」「ええ」
「千尋ちゃん、あさってまでバイバイや」「大阪さんも、あさってに…」

戦いの約束をした千尋はガードレールに設置してあるミラーに黄土色の光を反
射させて戦いの準備態勢をとる。ふと、大阪は思い出したように千尋に振り返
った。

「千尋ちゃん」「はい?」
「戦わなければ…」

千尋はデッキを構えたまま威勢良く応えた。

「生き残れない!」「ガンバやー」
「大阪さんも…がんばってね!変身!」

黄土色の鎧を身に纏い、1人の戦士が戦いを求めてミラーワールドへと姿を消
していった。

『…よみさん!よみさん!私です!シザースです』

照明灯の消えた自室でよみは、己のメガネにシザースの姿を発見して家をも訪
れるシザースの積極性にあきれた。

「…何もこんな時間に戦わなくてもいいだろ?」
『もしかして迷惑、でした?』「おまえな…もういい。変身」
「ったく…」

ゾルダはさっさと勝負を決めるためにマグナバイザーにカードを装填した。

《シュートベント》

呼び寄せられたゾルダのギガランチャーに目を光らせながらも、シザースはま
だその手に握ったカードを装填せずにゾルダの武器を観察していた。

「随分と強そうな大砲ですね」「…まあな」
「でも、私には効かないはずです」「試してみるさ!」

ゾルダーはトリガーを引いた。ギガランチャーが強烈な反動を残して火を吹い
た。真っ直ぐ向かってくるエネルギー弾に胸部の前で両手を交差させてシザー
スはエネルギー弾を受け止めた。

「!!!!」

爆発音と同時に両手が燃えるような感覚にシザースは声もなく大地に倒れこん
む。ゾルダはシザースが避けようともせずに被弾した事実に驚愕の声をあげた。

「さすが…よみさんです…」「なにを考えている!?」
「色々、です。でも、これで確信できました」
「確信だと?」「ええ。よみさんを選んで正解でした!」《スチールベント》

シザースが何かのカードを認識させた。途端にゾルダは視界が真っ暗になり、
頭痛と同時に全身から力が奪われていく感覚に立っていられなくなった。

「なんだ…この感覚?」

倒れこんだゾルダとは反対に立ち上がったシザースは、ギガランチャーをベー
スにしてボルキャンサーの力で再構築されていく新たな武器に喜びを隠せなか
った。

「よみさんのおかげで私は強くなれそうです」「なん…だと…?」

いまだに立ち上がれずに四苦八苦しているゾルダをよそにシザースはボルシュ
ートの重量に満足した。ゾルダはシザースの手にある妙に懐かしい形をした武
器を見て歯軋りした。

「よみさん、確かにいただきました」「それを…返せ!!!!」

ゾルダの声にシザースは黄土色の咆哮で応えた。ボルシュートから発射された
非爆発性の砲弾がゾルダを戦いの場から吹き飛ばした。

「これなら私も…」

ボルシュートの結果に満足したシザースはゾルダと同じようにミラーワールド
から姿を消した。明日からのさらなる戦いへの準備を済ませて…

【次回予告】

「…あんたを待っている人がいるの!」
「…変身」
「消えろ!消えろ!消えろぉ!」
「よみーーーーーー!!!!」

【戦わなければ生き残れない!】

【戦士達への鎮魂歌】
【ピンチック・アワー Ver.1016】
【あずまんがー龍騎!】
【第42話 : 傷痕】

【Back】

【あずまんがー龍騎!に戻る】

【あずまんが大王×仮面ライダー龍騎に戻る】

【鷹の保管所に戻る】
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送