あずまんがー龍騎!
【あずまんがー龍騎!】
【第43話 : 下された決断】

【Act1 : 智、神楽 : 死亡確認】

「お、おい!とも!どうした!?」「…」「とも!」

ミラーワールドから帰還した智は神楽の言葉に返事をしないまま、焦りを感じ
させる表情で黙り込んでいた。1分…2分…3分…一緒に行ったはずのよみは
まだ戻らない。智は立ち上がると、神楽に何も言わずにミラーワールドへと姿
を消した。そして神楽の前に再び姿を現した時…智は倒れこんだ。

「どうしたんだよ!?」「よみぃ…よみぃ…」

よみの部屋に広がっていく智の涙に比例して、神楽の顔は青ざめていった。

泣き止まない智。
帰ってこないよみ。
ミラーワールド。
ライダーの戦い。

「ま…まさか…へんしん!」

神楽は悪い予感を感じて変身すると、ミラーワールドを疾走した。ライダー達
の激戦の跡はすぐに見つかった。遠目からでもその周囲だけ破壊されくしてい
たからである。龍騎は隕石でも落ちたような中央部に駆け寄り、メガネレンズ
の破片を発見するや、力なく座り込んだ。

「うそだ…うそだ…」

―それが…ライダーの戦いだ

「うそだぁぁぁぁ!!!! …うあああああああ!!」

一緒に手伝っていれば…
全力で妨害していれば…
コアミラーを壊していたら…

悔やんでも悔やんでも胸に湧いてくる後悔と自責に耐え切れず、龍騎は頭を抱
えて叫び続けた。

「あああああぁぁぁ…!!」

叫ぶ気力も失い、だらりと頭を下げた龍騎は、座り込んだままの姿勢でドラグ
レッダーに命令を下した。

《アドベント》
「ドラグレッダー…他のライダーを…探してくれ…」「ヴォォォォン!」

夢の中の住人のようなおぼつかない足取りで立ち上がった龍騎だったが、ドラ
グレッダーが小さくなるにつれて気持ちを切り替えて、屋上から屋上へとむさ
さびの如き跳躍を繰り返した…

【Act2 : 優衣、ゆかり : 重なる記憶】

「メタルゲラス 出てきなさい」「ガォォォォン…」
「いたいた …ん?」

べノサーベルを片手に、ライダーとなったことで今まで自分に降りかかった数
々の災難への鬱憤晴らしを、士郎の関係者である優衣にぶちまけようと喜び勇
んでミラーワールドに進撃した王蛇は、悲しそうな声で叫んでいるメタルゲラ
ス以外誰もいないことに気がついた。王蛇はじろりとメタルゲラスを睨みつけ
た。

「ちょっと!あの子はどこに行ったのよ?」「ガォォォン…」
「ガォーンじゃわからないっての!」「ガォッ」

べノサーベルの柄でぽかりと頭を叩かれながらもメタルゲラスは、王蛇に両手
を胸で交差させ、お腹に片手を持っていくジェスチャーを何度も繰り返した。
当然メタルゲラスの動きを不審に感じて王蛇はそのジェスチャーの意味を考え
た。

「あんた、なにやってんのよ?」「ガォォ…ガォガォ!」
「あー?」

交差させた両腕を一旦肩と水平の高さにし、お腹に手を持っていった瞬間吠え
るメタルゲラスに妙に慣れ親しんだものを感じて王蛇は言葉にした。

「もしかして…あの子も仮面ライダーだったわけ?」
「ガォォン!! ガォォォン!!」「わかったから抱きつくんじゃねー!!」
「ガォッ」

王蛇に自分の意志が通じたことに、喜びのあまりメタルゲラスは抱きついた。
もっとも、さきほどよりもさらに強く叩かれたので素早く王蛇から離れた。

「まったくしょうがないわね…それにしてもあの子はどこに行ったのかしら?」
《アドベント》
「ピィィィィ!!」
「!? ガォォォォ…ン…」「メタルゲラス!?」

噂をすれば影。王蛇とメタルゲラスが首をひねって優衣の行方を考え込んでい
た矢先に、ブランウィングが飛翔した。ブランウィングは、メタルゲラスを空
の星にもなれそうな勢いで遠くに吹き飛ばすと、ファムの後ろへと着陸した。

「あなたも…仮面ライダー、だったのね」
「そだよ。あれ…? 確かあんた…あの時も…」

王蛇は先日、士郎によって集められた仮面ライダー達の中に今こうして目の前
にいる純白の戦士が同じように立っていたこと、ファムが口にしていたことを
思い出した。

「たしかあんた…戦いを止めたいって言ってたわねー」
「ええ。ちよちゃんを説得して、もうすぐこの戦いを終わらせてみせるわ!」
「ふーん…じゃあまずはわたしを止めてみなさい!」

《ガードベント》

飛び掛ってきた王蛇にファムはウィングシールドを構築して王蛇の拳とべノサ
ーベルを受け流した。両手がウィングシールドで受け流され、大地に倒れこん
だ王蛇は立ち上がらずに前転するや、片足でウィングシールドを吹き飛ばし、
片足でファムを吹き飛ばした。

「くぅー これよこれ!これが戦いの醍醐味なのよね!」

身体を震わせて戦いの快感に酔いしれながら、王蛇は両手を広げて獲物へと突
進した!

【Act3 : 榊、千尋、優衣、ゆかり : 妨害される戦い】

「榊さんどこよ!? もう!!」

―ドォォォン ドォォォン ドォォォン

シザースは姿を消したタイガサバイブを探してボルシュートを乱射していた。
ボルシュートの銃弾が建築物に激突死、粉砕していく重い衝撃音だけが周囲を
満たす。シザースは気付いていない。己の真上の建築物からデストバイザーツ
ヴァイを光らせ、隙を窺っているタイガサバイブに。

「…」

タイガサバイブはシザースが焦ってボルシュートを手放すまで待つことにした。
ボルシュートの銃弾だけが響いていたミラーワールドに、微かな悲鳴と、喜び
に満ちた雄叫びを聞いたタイガサバイブは、音の発信源を目で確認してみた。

「あれは…優衣に…ゆかり先生…? …優衣!!」

音の発信源では、ファムが一方的に王蛇に痛めつけられていた。仲間の危機に、
タイガサバイブはじっとしてなどいられなかった。ビルの壁を走りぬけ、ファ
ムの名を叫びながら大地に着地したタイガサバイブは、右手に装着している氷
雪爪デストバイザーツヴァイを王蛇の背中に振り下ろした!

「はっ!!」「んぎゃ!!」

王蛇は背中を走った数本の線の痛みに、ファムへの攻撃を中断した。

「榊…さん…?」「大丈夫か!?」「う…ん…」

弱々しく頷くファムにタイガサバイブは王蛇への怒りを隠せずにいた。一方の
王蛇もまた、戦いを妨害してファムを介抱しているタイガサバイブへの苛立ち
を爆発させた。

「あんた…私の邪魔をしたわね…私の邪魔をぉ!!」

怒りと苛立ちは真正面から激突した!

「おーりゃ!おりゃ!おりゃ!…」
「…」

ベノサーベルと拳を使い分ける王蛇にデストバイザーツヴァイの重い一撃で立
ち向かうタイガサバイブ。ぶつかっては離れ、ぶつかっては離れる2つの光を
見ていたのはファムだけではなく、未だに誰1人として倒すことが出来ないと
いう焦りを抱えたシザースも2つの光を発見して怒鳴った。

「榊さん、置いてくなんてひどいです!」

―ドォォン!

「っ!!」「まーた、邪魔? 邪魔を…するなぁぁぁ!!」

2人が激突する瞬間を狙ってボルシュートを発射したシザースに、またもや戦
いを妨害された王蛇は殺気を周囲に充満させながら、シザースに走り寄った。
白昼、見つかりやすい場所から堂々と2人をボルシュートで狙った自分の軽率
な行動に、シザースは物凄く後悔した。

「ゆ、ゆかり先生…こ、これは、その…」
「言い訳なら、あの世で聞いてあげるわ!」《ファイナルベント》

《シュートベント》

ハイドベノンの背にまたがってシザースとの距離を詰めていった王蛇も
ボルシュートを盾にして怯えきっていたシザースも
ファムへと駆け寄り両腕に抱きかかえて立ち上がったタイガサバイブも
王蛇の攻撃に意識を失いつつあったファムも

誰もが等しくドラグレッダーの力が込められた炎の雨の前に沈黙した。そして
知ったのである。1人の戦士が戦いを見下ろしていたことに…

【Act4 : 神楽 : 下された決断】

昔から私はよくいろんなことで迷ったな…
進路、部活、友人関係…いっぱいあった。
でも、なんとか乗り越えてきたんだよな。

ライダーになってからも私はすっげー…すっげー悩んだ。
ちよちゃんが入っているコアミラーを壊すべきか。
それとも、ライダーがモンスターと戦うことを止めたほうがいいのか。

私には、コアミラーを壊すことなんて出来なくなった。
だからみんなを止めようとした。
そしたら、大阪には殴られるし、よみは…よみは死んだ。

…ちよちゃんの気持ちだってわかる。
私だって自分を殺すことなんて出来ない。
でも、このままだときっと、みんなは…!!

…もう、迷ったりしちゃだめなんだ。
コアミラーを壊される前に他のライダーを私が倒してやる!
みんなが、死んじゃう前にデッキを壊して私が助けてやる!

【Act5 : 神楽、千尋、ゆかり、榊、優衣 : 因果応報】

龍騎は建築物から飛び降り、大地に足跡を残して4人から見て中央の位置に仁
王立ちすると、ドラグバイザーに力を求めた。

《ソードベント》

龍騎の手に構築されるドラグセイバー。龍騎はゆったりと構えてサバイブが解
除されたタイガとファムに先程の攻撃を謝った。

「わりぃな。榊、優衣ちゃん。でも、もうおまえたちは戦わなくていいからそ
 れで勘弁してくれ」
「え…?」「どういう、こと?」

戸惑ったのはタイガとファムだけではない。龍騎の奇襲から立ち直ったシザー
スと王蛇も同じだった。

「そうよ!説明しなさいよ!」「私も教えてほしいな」
「つまりだな…ん?」

ドラグセイバーを握りしめた龍騎は己の決断を説明しようと口を開きかけ、シ
ザースの手に握りしめられたものを発見して声が震えた。

「おまえ…それ…?」
「え!? あ、ああこれですか? これは、ゾルダさんから奪ったものですけど…」

もう龍騎に言葉は届かなかった。

ちよに一番最初にデッキを渡されるほどの期待されたライダーとしての素質が、
オーディンと日々コアミラーを賭けた激戦を繰り広げて得た戦闘経験が、グラ
ンメイルの力を最大限に引き出した。

「おまえがよみを!!」

龍騎は目にもとまらぬ敏捷さで仁王立ちから一転、シザースの前に現れや、シ
ザースの胸にドラグセイバーを突き刺していた。

「え…?」

瞬きほどの一瞬で起きた結末に誰もが目を疑った。龍騎に胸を貫かれて困惑し
ているシザース以外、誰もが現実に目を疑った。じわじわと痛みが襲ってくる
中、シザースは必死で龍騎の突然の行動の理由を訪ねた。

「なんで…私を?」

恐ろしいくらい静まり返ったミラーワールドで、龍騎はシザースの胸にドラグ
セイバーを突き刺したまま応えた。

「…よみを殺したのはおまえだろ?」「え? わ、私はよみさんはまだ…」
「まだ…? まだおまえは殺していないと言いたいのか!?」

《ファイナルベント》

「神楽さっ…!!」

シザースの弁解の言葉は、
飛翔したドラグレッダーへと天高く跳躍し、
ドラグレッダーの火炎を身に纏い、
飛び込みつつある龍騎の前では意味を成さなかった。

(私はこのまま、やられるの!? そんなのイヤ!)

咄嗟にミラーワールドから帰還しようと龍騎に背中を見せたシザースだったが、
龍騎のファイナルベント、ドラゴンライダーキックは情け容赦なくシザースに
爆発した!

「まだ、私は……!!」

シザースの声と煙幕が消え去った時。シザースの居た場所には龍騎だけが立っ
ていた。タイガはファムを抱えたまま一歩後ろに下がった。王蛇も釣られて後
ろに下がる。それほどまでに今、目の前にいる龍騎は…圧倒的だった。

「ふ、ふーん あんたも戦うつもりなのね」「…ああ、そうだよ!!」

言うが早いが龍騎は王蛇の正面に、背中に、頭に、脚に、胸に、グランメイル
によって上昇している動体視力からでも消えたようにしか見えない速度で、拳
を打ち込んで王蛇を黙らせた。倒れこんだ王蛇に見向きもせず、何も言わずに
近づいてくる龍騎に、タイガとファムは本能的に声を掛けた。

「神楽…何を、する気だ…?」「神楽…ちゃん?」
「榊…優衣ちゃん…安心しろ。おまえたちは殺さない。…デッキだけ壊させて
 もらうぜ!」

龍騎の言葉を聞いたタイガは、ファムを抱えたまま逃げ出そうとした。しかし
後ろに振り向いた時には、先回りした龍騎がタイガのデッキへと拳を振り上げ
ていた。

《トリックベント》「私が、みんなを助けるんだ!」

タイガのデッキへと向けて唸った龍騎の拳は、気絶していると思ったファムの
トリックベントの効果で虚しく空気を裂いた。拳を振り下ろした状態のまま立
っていた龍騎は、それならばと王蛇を探したが、王蛇もすでに逃げた後だった。

「…今日のところは、これぐらいだな」

龍騎はそう呟くと誰もいなくなったミラーワールドを後にした…

【仮面ライダーシザース、死亡。残るライダーはあと―8人】

【次回予告】

(にゃも…木村…待っててね)
『お前とここで決着を着けてやる…』
『変身!オルタナティヴゼロ!』
《ファイナルベント》

【戦わなければ生き残れない!】

【あずまんがー龍騎!】
【第44話 : 落陽の海】

【Back】

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【あずまんが大王×仮面ライダー龍騎に戻る】

【鷹の保管所に戻る】
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