あずまんがー龍騎!
【あずまんがー龍騎!】
【第45話 : ミラーワールドの力】

【Act1 : ちよ、士郎 : 静かな戦い】

美浜と刻印された屋敷の中に2人の人物が立っていた。

両手を組んで佇み、
金の羽で周囲を照らしながら
相手を観察する仮面ライダー…オーディン

両手を構えて佇み、
蒼い粒子で周囲を霞めながら
相手を睨みつける擬似ライダー…オルタナティヴゼロ

何から何まで相対的な2人は黙ったまま動き出した。制御回路を解除したこと
でオーディンを凌駕するスピードを手に入れたオルタナティヴゼロは、ベット
のある方の壁を蹴ってオーディンへと飛び込むや拳で人体の急所、水月を狙う。

一方のオーディンも、戦いを調整するためのグランメイルは伊達ではなかった。
不死鳥ゴルドフェニックスの羽を周囲に撒き散らして空間移動を行い、着地し
たオルタナティヴゼロの背後に一瞬で回ってオルタナティヴゼロを平手打ちで
壁に吹き飛ばす。

《ソードベント》

立ち上がるより先にスタッシュダガーを構築したオルタナティヴゼロは、部屋
の壁を切り裂いて廊下へと飛び出した。後を追ったオーディンが見たものは、
壁を高速で走りながら遠ざかっていくオルタナティヴゼロの姿だった。

《ソードベント》

ゴルドセイバーを握りしめ、100mを4秒で走るよりも速い空間移動を連続
で行いながらオーディンは、オルタナティヴゼロが消えた部屋へと飛び込んだ。
しかしオルタナティヴゼロの姿は…どこにもない。

「…」

オルタナティヴゼロはオーディンの襲来を認識するや天井に突き刺していたス
タッシュダガーに全体重をかけて真下へと落下した。殺気に気がついたオーデ
ィンは、ゴルドセイバーで防ぐと同時に間髪入れず、オルタナティヴゼロに襲
い掛かった。

ガガガガガガキィィィン!

息をする暇もないほどのゴルドセイバーの連続攻撃。その全てを切り払ったオ
ルタナティヴゼロは自分の真下にスラッシュダガーを突き刺して超高熱の蒼い
炎を唸らせた。一瞬で溶けきった床に姿を消したオルタナティヴゼロはオーデ
ィンを新たなる戦いの境地へと導いていった…

【Act2 : 神楽、黒ちよ : 現れる影】

戦いを終わらせるために戦う仮面ライダー、龍騎。龍騎は他のライダーの所在
を知る目的でコアミラーの真上でオーディンを待っていた。コアミラーをひた
すら探し続けていた龍騎にとって、微かな気配を辿ってコアミラーを見つける
ことはそう難しいことではなかった。

「おい!いるんだろオーディン!出て来やがれ!」

万能に近い性能を誇るオーディンでも、激闘の最中にコアミラーへと空間移動
をするのは無理な話である。いくら叫んでも現れないオーディンにいらいらし
た龍騎に意外な人物が姿を現した。

「神楽さん、何をしているんですか?」「おまえは…」

鏡で反射させたかの如く龍騎のグランメイル酷似したグランメイルを纏うライ
ダー、リュウガ。リュウガは龍騎の隣へと飛翔した。

「私と戦うつもりか!? 戦うつもりなら…受けて立つぜ!」

威勢の良い龍騎の言葉にリュウガは立ち止まって戦うべきか否かを一瞬で判断
した。

(…神楽さんは私の言葉を信じてコアミラーとモンスターを守っているはず。
 今、倒すよりは他のライダー達と戦わせた方が遥かに効率が良いですね…)

「…神楽さんがコアミラーを傷つけない限りは、戦うつもりはありませんよ」
「そっか…っと、そんなことはどうでもいいんだ。オーディンはいねーのか?」
「未だに現れないってことは、いないのかも知れませんね」

龍騎はリュウガの言葉を聞いて肩を落としたが、以前、目の前にいる存在が自分
に有意義なアドバイスをしてくれたことを思い出し駄目で元々、聞いてみた。

「なぁ…おまえってさ、コアミラーに入れるか?」
「残念ですけど私では無理です…でも神楽さん、どうしてそんなことを聞くん
 ですか?」
「んー…実はさ、中に友達が閉じ込められているんだ」「!!」
「それで何とか助けてやりたいんだけど…」

龍騎は目の前にいる人物も影の存在とはいえ同じちよであることを知らない。
リュウガは龍騎が真実を知ってコアミラーを破壊出来なくなったことを悟った。

「…何か方法を知らないか?」 
「方法、ですか…」「知ってるなら頼む!教えてくれ!」
「…わかりました!神楽さんに力を貸しましょう!」「おお!サンキュー!!」

身を乗り出した龍騎にリュウガは、オーディンが現れない今こそ、本体を手に
入れる絶好の機会だと知って片棒を担がせることにした…

【Act3 : 優衣、神楽 : 強制連行】

「…衣さん…優衣さん」「ん…誰…お兄ちゃん…?」

外部からの刺激でスリープベントから意識を取り戻した優衣は、自分を起こし
た見覚えのない女性に首を傾げた。

「あなたは…誰…?」
「神楽って言うんだけどさ…優衣さんとにかく一緒に来てくれ!」
「榊さんを置いて行くの…?」「榊は後だ!」

スリープベントの影響でまだ頭がぼんやりとしている状態の優衣は、神楽とい
う言葉に妙に引っかかりはしたが、変身した龍騎に抱きかかえられても抵抗せ
ずに、公園で翼を休めているコアミラーへと連れて行かれた。ちなみにリュウ
ガは2人からは見えない場所から様子を窺っていたりする。

「これは…なに…?」
「…コアミラー」「これが、コアミラー…」
「優衣さんに頼みがあるんだ…あれに手を近づけてくれ」
「手を、近づける…」
「あの中に私の友達が閉じ込められていて、助けるには優衣さんの協力が必要
 らしい…頼む!手伝ってくれ!」「…わかった…やってみるよ…」

両手を合わせて拝む龍騎をじっと見つめていた優衣だが、立ち上がってふらふ
らとコアミラーへと歩き出した。

1歩…2歩…3歩…

ゆっくりと埋まっていく距離。龍騎とリュウガは息を呑んで優衣を見守った。

4歩…5歩…6歩…

コアミラーの前へと辿り着いた優衣は龍騎の願い通り手を近づけた。

「え…?」

優衣の手が近づくにつれてその箇所を中心にしてコアミラーがさざ波を立てて
いき…優衣の手がコアミラーの内部へと潜り込んだ。龍騎はリュウガの話通り
の現象を目の当たりにして飛び上がった。

「よっしゃー!優衣さん、そのまま中に入って助けてきてくれ!」「…うん…」

龍騎の言葉通り更に歩み寄った優衣は完全にコアミラーの中へ潜った。優衣が
コアミラーの内部で見たものは、青く透明な液体であった。一瞬呼吸を忘れて
混乱する優衣。

「!? …息は…出来るんだ…」

数秒後、この液体の中でも普通に呼吸が出来ることに不思議に思いながらも、
優衣は内部の中央目指して泳いでいき…1人の見知った女の子と1枚のカード
を発見した。

「ちよちゃん、それにこのカードは…マヤー…あれ、ここはどこかしら…?」

見知った2つの懐かしい姿に完全に意識を取り戻した優衣。とりあえずカード
をポケットにしまい込み、ちよの身体を抱き寄せて再びコアミラーの外壁に手
を近づけた…

【Act4 : ちよ、士郎 : 致命傷】

《アクセルベント》

玄関へと雪崩れこんだオルタナティヴゼロとオーディンの戦いは、より激しさ
を増していた。速度は段違いだが、ゴム鞠のように玄関の両壁を弾んで何人も
のオルタナティヴゼロが飛び込んで来た錯覚をオーディンに与えながら、オル
タナティヴゼロはスタッシュダガーを振り下ろした!

《トリックベント》

虚像を見破るよりも己も虚像となった方が有利だと判断したオーディンは、金
色の羽でオルタナティウゼロの視界を埋め尽くして力を解放した。

《ファイナルベント》

「クェェェェ!!」

玄関を突き破って飛来したゴルドフェニックスが甲高い声で一声叫び、身に纏
っている炎を更に強める。オーディンは万有引力の法則を無視してゴルドフェ
ニックスまで浮き上がると、永遠の炎を背に纏って玄関を飛び回った!

流石のオルタナティヴゼロも、玄関全てを燃やし尽くす勢いで飛翔しているオ
ーディンのエタナールカオス全てを回避することは無理だった。避け損ねた一
撃がオルタナティヴゼロの身体を襲った。

「!!!!」

オルタナティヴゼロは声無き声をあげて大地に倒れ伏せると、飛翔してくるオ
ーディンにスタッシュダガーを構えて最後まで睨みつけていた。

オーディンが突進するのと、優衣がコアミラーからちよとマヤーのカードを連
れ出したのはほぼ同時であった。思わず今の状況を忘れて絶叫するオーディン。

「優衣、よせーーーーー!!!!」

空中で動きを止めた宿敵を前にして何の躊躇いが必要だろうか?

オルタナティヴゼロはスラッシュダガーをオーディンの胸部に深々と突き刺した。

「…がはっ…」「私の…勝ち、です…」

ゴルドフェニックスをも串刺しにしたままオルタナティヴゼロはオーディンに
勝利を宣告した。グランメイルが砕け散った士郎は口から一筋の血を流しなが
ら冷酷な事実を伝えた。

「優衣が、おまえの身体を解放した…リュウガの近くで…」「!!」
「これでリュウガはコアミラーの力をも手に入れる…戦いは…終わりだ…」
「そんな…」

生き残った最後のライダーの命を奪う予定だった士郎にとって、リュウガは淘
汰される存在でなければならなかった。半分の命では優衣を救うことが出来な
いからだ。士郎同様絶望でオルタナティヴゼロの力が強制解除されたちよは、
玄関に大きな血の染みを作りながら倒れこんでいる士郎に駆け寄った。

「まだ、何か方法がある筈です!」「無駄だ…虐殺が…始まる…」

ちよの影の部分である黒ちよは、解放されてからは殺意と憎しみが存在理由に
なっている。その黒ちよが世界をも壊せる力を手に入れれば、何の迷いもなく
使うだろう。すなわち…ミラーワールドと現実の融合。

「優衣…俺はおまえを…助けられなかった…ごめんな…優衣……」

普段の士郎からは想像も出来ない少年のような声で優衣に謝りながら士郎は粒
子となって散った。ちよもまた粒子の中へと消え去ろうとしていたが、サイコ
ローグを呼び出して命令を与えた…

【Act5 : 神楽、優衣、黒ちよ : ミラーワールドの力】

「優衣さん、すっげー…すっげー!!」「そ、そうかな…」

龍騎の褒め言葉に少し照れながら、優衣は背負っていたちよの身体を龍騎の前
へと下ろした。ちよの眠れる身体に、優衣は一抹の不安を隠せなかった。

「ミラーワールドは、どうなるのかしら?」
「ちよちゃんが身体を取り戻したら大丈夫って聞いたぜ!」
「そうなんだ…これでお兄ちゃんも…良かった…でも、神楽さんは誰からこの
 話を聞いたの?」
「えーっとだな…」「私ですよ優衣さん」

どれほどリュウガはこの瞬間を待ち望んでいたか。一日千秋の想いが遂に報わ
れることに喜びながらリュウガは本体へと飛び降りて龍騎と優衣に拳を叩き込
んで吹き飛ばした。

「きゃあ!!」「優衣さん!? …てめー何すんだよ!!」
「本当に神楽さんと優衣さんには感謝の言葉もありません…お礼に…」

リュウガは喋りながらもちよの身体の中にどんどん潜っていき…完全に1つと
なった。

「…楽に殺してあげましょう!」
「な、なんでお前がちよちゃんの身体に入れるんだよ!?」

ミラーワールド全てを把握する力。現実世界で消え去ることのない身体。黒ち
よは遂に手に入れた大いなる力に満足した。黒ちよが何気なくこちらを向いた
瞬間。龍騎は優衣に向かって本能的に叫んだ。

「走れぇ!!!!」

黒ちよの手の平にミラーワールドの空気が圧縮され、標的に向かってカマイタ
チという形で解放された。身体を走った痛みに耐えながら龍騎と優衣は現実へ
と飛び込んだ。

「…こんなことも出来るなんて、凄いです♪」

自分が手に入れた力にすっかり満足した黒ちよは、辛うじて別々の場所から逃
げ切った龍騎と優衣には興味が消え、明日の準備の為に現実世界へと侵入した。
虐殺という名の祭りの準備の為に…

【Act6 : ゆかり、優衣 : 闘いの約束】

ベルデを撃退して電車から降りたゆかりは、鼻歌を歌いながら街中を歩いてい
た。人だかりに気付いたのはその直後である。野次馬根性全開で間を掻き分け
て突進したゆかりが見つけたものは、ぐったりとした優衣の姿だった。

「あんた…どしたのよその傷?」「ゆかり…先生…」
「それにしても酷い傷だな…どうしたんだろ?」
「きっと暴力団に巻き込まれたんだよ」「いや俺は…」

周囲を囲んでいる野次馬達が、傷ついている優衣について推測しあっているの
を聞いたゆかりはカチンときて怒鳴った。

「ほらほら、見世物じゃないんだからあんた達、さっさと帰んなさい!」
「ちぇー …何だよ自分は突っ込んできたくせに…」
「そこのブツブツ言っているアンタ!救急車に電話しなさい!返事!」
「は、はい」

ゆかりの一喝で蜘蛛の子が散るように姿を消す野次馬達。ゆかりは周囲に人が
いなくなったのを確認して優衣に尋ねた。

「…誰にやられたの?」「リュウガが、ちよちゃんの身体を使って…」
「そう…わかったわ。…大丈夫。これぐらいの傷なら助かるわよ!」
「ゆかり先生…」「んー?」
「どうして、私を殺さないの…?」

優しい言葉を掛けている目の前の人物はただの高校教師ではなく、戦いを選択
したライダー、王蛇である。契約モンスターさえ呼び出せば今すぐ殺すことが
可能な状況なのに一向に呼び出そうとしないゆかりの態度に優衣は疑問を隠せ
なかった。優衣の問いに苦笑しながらもゆかりは応えた。

「あんたねー…いくら私だって、死にかけているあんたを襲うほど落ちぶれち
 ゃいないわよ」「…ありがとう」
「何よ。お礼なんか言っちゃって…ま、今日はいいから、そのかわり明日は私
 と戦いなさい」「…うん…」

優衣に命令形で言い放ったゆかりは立ち上がると、近づいてくる救急車に手を
振って怪我人の場所を知らせた…

【仮面ライダーオーディン、死亡。残るライダーはあと―6人】

【次回予告】

―昨夜未明に起きた大量行方不明者が発生した事件で、政府によると…
「カード、なのかな…」
『…おい…おい、智、ちゃんと聞いているか?』
「…私も、用事を思い出したの…大切な、用事」

【戦わなければ生き残れない!】

【あずまんがー龍騎!】
【第46話 : 約束の時】

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