あずまんがー龍騎!
【あずまんがー龍騎!】
【最終話 : 最後の力】

【Act01 : AM11:56〜AM11:57 : 神楽、智 : マジカルランド(鏡) : 絶望する希望】
 
大地が砕け、破片が彼方にある虚空へと吸い込まれながら鏡の欠片へと戻っていく。
天へと向かって鏡降る世界、崩れ落ち舞い上がる戦場に無慈悲な裁断が鳴り響く。
 
≪ファイナルベント≫
 
ベントインによる効力認証によって身に宿した風がナイトサバイヴの身体を突き動かす。
ナイトサバイヴが己を掴み背に乗るやダークレイダーは瞬く間に空へと駆け上がった。
 
「ともぉぉぉ!!!!!」
 
龍騎サバイヴの声が虚しく宙へと消えゆく。鎧を纏い敵を屠り失ったものを
取り戻すため、最後の1人になることを選んだ者にはもう…何も届かない。
 
『…神楽はさ、最後に生き残った仮面ライダーはどんな願いでも叶うって知ってた?』
『私の帰る場所は………よみがいる世界だ!!』
 
ナイトサバイヴの沈痛な声が心を抉り、夜の剣痕が体を蝕む。見上げた空には幻想が1つ。
それはどこまでも愚直で、どこまでも憐れで、どこまでも健気なナイトサバイヴの姿。
 
「……いてて…」
 
想い出と後悔によって呪縛されかけている強張った身体に気が付き龍騎サバイヴは。
希望を絶望によって塗り替えられ傷付けられそれでもなお奮い立った。生きる為に。
 
―――こんなところで死んでたまるかよ! とにかく私も智も生きている。
   生きているんだ! なんとかファイナルベントをやり過ごして
   それから…智と一緒に帰るんだ! ぜったいに!
 
龍騎サバイヴの決して消えることのない焔の意志が幾つかの選択肢を紡ぎ出す。
 
―――建物の中に逃げ込む…ファイナルベントはそんなんじゃ止まらねえな。今すぐ走って
   逃げだす…追いつかれちまうか。………くっそー……どうすりゃいいんだよ…!?
 
されど散々痛めつけられた煌めきは、空を舞う闇風を払い除けるほどには輝けない。
掠めたまま消えた活路。文字通り粉砕された脱出口。このまま手を拱けば結末は1つ。
それでも最後の瞬間まで戦い続ける炎の化身が、龍騎サバイヴがここに立っていた。
 
―――全てが塵に消えゆくまでの時と己が滅ばされる間の境で
 
身に宿した炎が龍騎サバイヴの身体を突き動かし…
いつしか龍騎サバイヴは1枚のカードを握りしめていた。
 
―――力で力を相殺する
 
均衡な力でなければどちらかが倒されるという危険性が潜んでいる故、意図的に
考えていなかった方法だけが残されている現実が、そうした方法でしか未来を
切り開けない自分自身が龍騎サバイヴには悔しかったがもう、時間がない。
 
龍騎サバイヴは最後の力に苦節を託した。
 
≪ファイナルベント≫
 
龍騎サバイヴの手がパンドラの箱を開封する。
サバイヴの翼で最後に残されたものを導くように。
何もかもを失って不望の荒野を彷徨うことがないように。
 
「私は生きて…生きて帰る! おまえも連れて帰る! それが…それが私の願いだー!」
 
【Act02 : AM11:47〜AM11:52 : マヤー、サイコローグ : 病院館内(鏡) : …おかえり】
 
破滅の音色が奏でられて何もかもが消え去っていく中、サイコローグは疾走する。
 
目的地はミラーワールドの情報から盟約者であるタイガが存在していると判断した場所、
病院館内。先程から矛盾した情報が流れてくるようになってきているがほぼ同時刻に
リュウガが病院から離れていったという記録も併せて考えるとタイガは…。
 
―――榊さん…
 
やがて。
 
激しい戦跡が視界へと自明の理となり現れた。無残な傷跡だらけの病院を前にして
サイコローグは沈黙したまま、タイガとリュウガの戦闘記録に誘われて歩く。
黒龍の蹂躙によって開かれた外壁を通り抜け、朽ちた通路をよじ登り…
 
原型を留めない程に破壊され尽くした瓦礫の墓標に辿り着いた。
 
そこが大量の血液によって彩られていなくても。
そこを最後にタイガの記録が途絶えていなくても。
 
今のサイコローグにはここがタイガの眠りし場所だと理解できる。
何故ならタイガだけに心を許した存在、マヤーが立っているのだから。
 
―――間に合わなかった…私は結局…誰も…
 
虚脱したサイコローグは床であった場所に派手な音を立てて膝を着いた。
主を守るべく標のない墓碑から飛び降りたマヤーは異形の物体に毛を
逆立てたが、敵意がないことを察知して鳴き声だけで向かえる。
 
「ギャーオ」
 
サイコローグがマヤーを視認する。ネコ科に属するイリオモテヤマネコ。
通常ならそれだけだ。だがマヤーがタイガにとってどれだけ大きな
存在だったのか、どれだけ慈しんでいたのかを知っている今は。
 
「マヤー、さん…」
 
サイコローグは無機質な音声に微かな女性的な声を宿してマヤーに挨拶を返した。
精一杯の愛情を込めて。そして粒子から伝わってくるタイガの願いを理解し、
かつての自分にはできなかったこと、今の自分にはできることを見出し。
 
サイコローグは再度ミラーワールドに端末を接続した。
 
―――現在残っているライダーは………龍騎とナイト………互いにサバイヴを発動………
   コアミラーがカタチになるのも時間の問題……… ………!! 今なら………
   今ならマヤーや神楽さん、智ちゃんを………
 
「マヤー、さん」
「ギャーオ」
「…私は結局、みんなをライダーの戦いに巻き込んでしまいました。神楽、さんも、榊、
 さんも、智、ちゃんも、暦、さんも、大阪、さんも、かおりん、さんも、千尋、さんも、
 ゆかり、先生も、黒沢、先生も、木村、先生も、優衣、さんも………」
「私にはやり直せるだけの力…タイムベントが、ありません。せめて榊…さんの願いを…
 神楽さんの希望を…智ちゃんの哀しみを今度こそ…私が…私が何とかしてみせます!」
 
―――それが私だった者の願い、ですから…
 
ミラーワールドを維持してきたコアミラーが最後のライダー同士の戦いを触媒にして
1つのカタチへと変容していく。神崎が求めつつ辿り着けなかった純粋な祈りへ。
傷ついた未来に小さな願いを織り上げる為、サイコローグは祈りを奉げた。
 
「まずは…これ以上ここにいると危険なマヤーさんからですね」
 
コアミラーに接触して数字の羅列へと変換した力の源泉を自らの内部へと誘導し、
転送して獲得した力を区分した後、整合してそれぞれの願いへと創り替える。
最後のライダー以外に赦されざる絶対領域を己が内へと組み込んでいく。
 
「………」
 
―――絶対性が全身を蝕み覆い尽くす
 
高負荷の莫大なエネルギーがサイコローグの機能を次々と奪い続けていき、
やがて…サイコローグとマヤーと墓標の中間地点に1つのカタチが出現した。
淡く白い光を放つ球体。全てを埋め尽くす白ではなく、優しく周囲を満たす白。
 
「ミャーオ」
 
白く淡い輝きを放つ球体、主によく似た優しい光に自然と近付いて行くマヤー。
サイコローグはマヤーが遺された想いに飛び込む光景を見守っていた。
願いを込めて抱きしめられるマヤーの姿を静かに、静かに…。
 
【Act03 : AM11:56〜AM11:58 : 神楽、智 : マジカルランド(鏡) : ミラージュ】
 
大地を蹴り空へと飛翔する。ダークレイダーを通して伝わる風の波動が
目の前の相手を記憶からも消去してくれることを約束している。
 
この先にあるのは…死。
 
勝ち残り、最後の1人になっても何も起きず、何も叶わず、立ち尽くして
滅びていくだけなのかも知れない。願いが叶うという確証もないままに
最後の力を発動させたのは日常を取り戻す為の…最後の機会だから。
 
≪ファイナルベント≫
 
「…」
 
音が消滅した世界で、龍騎サバイヴの不屈の意志がナイトサバイヴの心をざわめかす。
ミラーワールドから出現する異形の生物との戦いで最も恐ろしい強さの象徴が聴こえた。
 
大空で旋回しながらナイトサバイヴは龍騎サバイヴを見つめる。
龍騎サバイヴの炎の如き情熱を宿す瞳は何度見ても揺らいでしまう。
 
「智!」
「…何だよ」
 
自らがどんな横暴によって仲間を、過去を歪めようとしているのかはわかっている。
それでもナイトサバイヴの心が挫けないのは、暦が隣で自分を止めてくれない世界のせい。
 
「このバカ! おまえみたいなバカヤローは私が止めてやる! だから…絶対死ぬんじゃねーぞ!」
「………そんなこと言われても…でも、…でも、私は…やってみるしかないんだ!」
 
龍騎サバイヴが悩みながら2人とも助かる可能性を信じて、ファイナルベントを
選択していることを言葉から実感したが戦う以外知らない故に顔を背けた。
 
「…っ!! …本当に………バカヤロー…」
「神楽………行くぞ!」
 
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
  
大地を殴って空を切り裂く。ドラグランザーを通して伝わる炎の鼓動が、
目の前の相手の生死すらも変化させてくれることを予感させる。
 
この先にあるのは…生。
 
生き残り、最後の1人になることを拒み続けた結果、自分だけが消えていく
滅びとなるだけなのかも知れない。両者が生き残る可能性が低いままで
最後の力を発動させたのは全てを消し去らない為の…鎮魂歌だから。
 
≪ファイナルベント≫
 
「…」
 
音が喪失した世界で、ナイトサバイヴの沈黙の決断が龍騎サバイヴの心をふるわせる。
ミラーワールドでのオーディンとの戦いで最も己を救ってくれた希望の象徴があるから。
 
上空に駆け上がった龍騎サバイヴはナイトサバイヴを見つめる。
ナイトサバイヴの風の如き鋭さを燈す瞳は何度見ても迷ってしまう。
 
「智!」
「…何だよ」
 
自らがどんな暴挙によって仲間を、未来を圧迫しようとしているのかはわかっている。
それでも龍騎サバイヴの心が諦めないのは、もう誰もこんな戦いで死なない世界を望むから。
 
「このバカ! おまえみたいなバカヤローは私が止めてやる! だから…絶対死ぬんじゃねーぞ!」
「………そんなこと言われても…でも、…でも、私は…やってみるしかないんだ!」
 
ナイトサバイヴが当惑しながらそれでも友を取り戻したくて、ファイナルベントを
使用していることを動きから痛感したが戦う以外知らない故に悔しかった。
 
「…っ!! …本当に………バカヤロー…」
「神楽………行くぞ!」
 
【Act04 : AM11:52〜AM11:57 : サイコローグ : 病院館内(鏡) : 屑鉄への秒読み】
 
サイコローグは作業を続ける。巻き込まれ、巻き込んでしまったことへの罪の意識から。
 
防衛機能から流れ込んでくるエネルギー総量は圧倒的であり自身の内部へと転送し、
強制的に再構成する過程の反動で現在、サイコローグは殆どの機能を失っていた。
命令系統の不具合によって動作もままならない活動しているのが不可思議な身体で。
 
サイコローグは作業を続ける。自分に残されたもの全てを消費して。
 
受容した高エネルギーの塊が願いへと導ける程度にカタチが整ったのを確認した後、
壊れた人形のようなたどたどしい動きで龍騎サバイヴとナイトサバイヴの現状を
把握するべく、サイコローグはまだ機能している端末子を病院の床に接続した。
 
―――神楽さんと智ちゃんが…………互いにファイナルベントを……発、動…………!!
 
接続すると同時にノイズ混じりに流れてきた情報が、最悪の事態を告げていた。
 
龍騎サバイヴとナイトサバイヴがファイナルベントをベントインしている姿が電子頭脳に
刻まれている矢先に不意に暗くなった。端末の機能が失われて我に返るサイコローグ。
 
目の前には2つ目のカタチが完成している。両者の損傷状態から次に完成させた願い。
強くけれど時に儚い光を放ち、周囲を暖め迷いながら前に進むことを祈った願い。
 
―――あとは…………の…………分も作って…………
 
サイコローグは最後の願いを構築するべく作業を再度開始した。
微かに動く右腕で機能している最後の端末子を接続する。
 
―――転送する…………だけ、ですね…………
 
サイコローグは作業を続ける。かつての友人達を救う為に。
 
【Act05 : 戦いの終焉を望む声】
 
世界が終わろうとしていた。その世界の名は、ミラーワールド。無数の命と異形の生物、
選別された贄達によって流された血が終焉を望んでいた。その中心で。終わらない嵐が、
風と炎がミラーワールドを構成する全ての存在を巻き込んで粉砕しながら展開していた。
 
炎の塊となったドラグランザーがダークレイダーに絶え間なく原始的な攻撃を続けている。
通常のモンスターなら通り抜けられるだけで瞬時に蒸発するような超高温での体当たり。
 
ドラグランザーの必殺の当て身もダークレイダーを覆う真空の鎧が直接的接触を妨げ、
全身から発生している光冠も真空の鎧によって蒸散されているので効果がない。
 
ダークレイダーもまた両翼から相手を切り刻むに充分なテンペストを発生させてはいるが、
ドラグランザーの周囲に湧き上がるコロナに霧散されていくだけで目的は未だ達せられない。
 
炎熱の加護と真空の祝福が必殺を無効化している今、ドラグランザーとダークレイダーに
残されているのは全体重を乗せた突進、牙での噛み付き、そして爪で切り裂くこと。
 
サバイヴの力は敵意の侵蝕を拒絶するだけの力も与えているので、全ては虚しく軌跡を
残すのみ。予定調和の舞踏会。決定的な打撃、それが両者には欠けていた。
 
ドラグランザーとダークレイダーは幾目かの突撃でそのことに気が付き大地へと降臨する。
決着が付かずじまいとなった空中から舞い降りて崩壊しつつある代地、偽りの大地にて
ドラグランザーとダークレイダーは空中では不可能であった加速追撃を発動させた。
 
【Act06 : 炎と風の輪舞曲】
 
燃え上がる鱗から 
烈火を糧に炎を軸に
希望を未来へと繋ぐ 
 
烈火の龍
 
舞い上げる翼から 
疾風を糧に嵐を軸に
願いを彼方へと運ぶ 
 
闇の蝙蝠
 
灼熱の円を猛々しく具現化せよ 
全てを灰するドラグランザー
 
運命の輪を終の時まで果てなく廻せ 
全てを貫くダークレイダー
 
鱗からなる車輪が燐を呼び 
翼からなる車輪が迅を冀う
 
両者互いに異なるカタチ 
両者互いに異なるチカラ
 
されど願いは唯1つ 
されど祈りは唯1つ
 
大地に火が降り風が舞う 
時は満ちたり場は整いたり
 
対峙するは人 
乗せるは使い魔 
 
何もかもはその胸中に 
何もかもはその強さに
 
一瞬の静寂 
一瞬の殺意
 
映るは仲間達への想い 
見るは惜別すべき友人 
 
使い魔に合図するのは人の意志
使い魔が葬るのもまた人の意志
 
己に在る総ての火を解放
消せない未来を目指す灼熱と化す
 
界に或る風を統べて収束
過去のかけらを導く神速がここに
 
近いようで遠いみち 
短いようで長いとき
 
炎と風 全てを巻き込み破壊する
 
【Act07 : 勝利の犠牲、敗北の死生】
 
ドラグランザーが口吟するように火炎の塊を射出する。ダークレイダーは高密度に練った
蒼い道標を展開する。ドラグランザーが吹いた破壊の衝動は周囲にのみ穴を開け、
ダークレイダーが撃った束縛の真空はあっさり避けられる、それが前哨戦。
 
交差。
 
光の眩しさに瞳を逸らす余裕や交差した闇の輝きに胸を馳せる時はどこにもない。
主達の葛藤や苦悩が契約獣の動きを惑わせるだけの自由意志も存在しない。
許されるのは相手を消滅し尽くすこと、それだけの動きと力のみ。
 
転進。
 
真っ直ぐに。そう、真っ直ぐに。互いを無視して通り抜けた路を向き合う獣達。
破壊衝動と全力の解放を許可されている今、次で全てが決まるのは自明の理。
微かな差異が全てを分かつ今、加速して減速させる為に炎と風が舞う。
 
閃光。
 
最低限の動作で迫り来る風と炎を回避する、終わることを知らない2つの光が
どちらとも道を譲ることなく真正面から衝突する。己も逃げず敵も逃げない。
最大の力で最大の脅威と戦えることに、獣達は歓喜しながら躍り掛かった。
 
襲撃。
 
不動の風を切り崩しながらドラグランザーの鋭利な牙と爪が闇の城に辿り着く。
引き裂き噛み砕き千切り捨て、無理矢理開門させた扉の奥で眼界が捉える。
ダークレイダーの開かれた口から迅速の刃が連続で解き放たれる姿を。
 
反撃。
 
より大きな被害を与えるという命題を達成するべく、ダーグレイダーは翼に
食い込む爪を真空で切り落とし、侵入してきた牙には休むことなく旋風。
爪を吹き飛ばし牙を退けそれでもなお拮抗する力は脅威と化していた。
 
殺神。
 
肉体を好きなように切り刻まれながら、ドラグランザーは遂にそれを見つける。
意識を預けて静かに結末を待つ者の姿を。引き離して勝利を掴むべく、
あらんかぎりの力を込めてナイトサバイヴの背中に噛み付いた。
 
瞬間。
 
ダークレイダーは加減を知らぬ牙が何もかもを噛み砕く未来を読み取り、
屠ること、護ることを両立させるべく残された最後の力を選択した。
状態を強制解除してナイトサバイヴを振るい落とし解き放つ、風。
 
虚無。
 
圧縮されていた風の元素がダークレイダーを中心として無へと導く虚空に化す。
ドラグランザーが気付いた時には既に遅く、何もかもが巻き込まれていく。
時も願いも想いも光も闇も炎も風も無へと全て吸い込まれていった。
 
【Act08 : 賜われし寂滅を滅ぼし尽くすは、人間】
 
やがて。望まれた果ての世界で、最後の1人となった彼女が覚醒して立ち上がった。
最後の戦いで生まれた終わりを愛でる絶望の化身が空と地を貪欲に喰らっている。
絶望の入り口は徐々に拡大しており、彼女が立っている彼の地も失われていく。
 
眼前に広がる全てを吸い込んでいく絶対空間に暫し見惚れていた彼女だったが、
どんな形をしているのかすらも解らないが、目的のものを探すべく後ろを
振り返って、自分が蹴った堅い音のする物に目を向け息を呑んだ。
 
誰かのカードデッキが四散していたのである。
 
ミラーワールドで活動する為に必要な力の紋章、カードデッキの破片を見る。
それは誰の為のものだっただろうか。最後まで願いを祈り続けた誰か、
良く知っている筈の所有者が、どうしても誰なのか想い出せない。
 
否。想い出したくないのだ。自分が祈りを粉砕したのだから。
止めどなく涙が流れるが拭きもせず受け入れる。望んだ結末を。
 
残った手の平ぐらいの世界の上に小さな願いのカタチが構築される。
屍の上に築き上げられた王の玉座は、皮肉なまでに神々しかった。
 
死も生も祈りも殺意も過去も現在も未来すらも従わせる力の結晶は透明で、
強い光を放つ球体のカタチをしていた。その光は誰かによく似ている。
 
また涙が流れた。その涙にもう意味はない。これから意味を失う涙になる。
砕けた残骸にためらいながら、彼女はゆっくりと未来に手を伸ばした…
 
………
……

 
【仮面ライダー龍騎、脱落。残るライダーはあと―1人】

【あずまんがー龍騎!】
【最終話 : ずっと、いっしょ】

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【鷹の保管所に戻る】
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