仮面ライダー 神楽
【仮面ライダー 神楽】
【第一話】

『仮面ライダー 神楽』 第一話 <壱>

200X年 首都・東京の片隅。WEB&メールでのニュース配信が生業の『OREジャーナル』
ここから物語は始まる。

 その日の朝は、オフィスに響く不機嫌そうな女性の声で始まった。
 「ちょっと、島田さん!パソコン直ってないじゃない」
彼女の名は桃井令子。凛とした美人。このOREジャーナルのたった一人の敏腕記者だ。
 「今朝までにお願いって言ったでしょ!」
 一方、島田と呼ばれた女は、そんな令子の抗議にも背を向けたまま、どこ吹く風。彼女は同社の
これまた、たった一人のシステムエンジニア。個性的な美女(?)である。
 埒が明かないとあきらめたのか、令子はため息をつくと、いらだちの矛先を動かぬパソコンに変
えた。年寄りが写りの悪いテレビにやるように、手のひらで叩いてみる。
  「痛ッ!」
 島田は、あたかも自分が叩かれたかのごとく呻いた。 怒気も顕わに令子に歩み寄る。
 「あなたにはパソコンに対する愛がない!愛がないから彼氏もいな〜い」
 「何よそれ!ケンカ売ってんの?」
 令子も一気にヒートアップする。一触即発だ。
 「ち、ち、ちょっと。もーやめろって、二人とも」
 睨み合う二人の間に割って入ったのは、編集長の大久保だった。
 「・・・とくに令子。お前、ここんとこ、ちょっとイラだってないか?」
 「そりゃイライラもしますよ。今月に入ってから謎の失踪事件がもう七件!まるで神隠しにあっ
たかのように、人が消えちゃってるんですから」
 「だよな・・・しかも、未だ解決の糸口すらつかめず、だ」
 大久保も、沈痛な面持ちになった。
 「俺もそのことを考えるとな、こう、胃の辺りがキリキリしてきて食欲が」
 「ムニャ・・オバちゃん、カツ丼セット蕎麦大盛り!卵もね!」
 「うっぷ!」
 思わず吐き出しそうになった大久保は、寝言の主を怒鳴りつけた。
 「てめ、この、おい神楽!起きろ!」

『仮面ライダー 神楽』 第一話 <弐>

 「ふぁーあ、よく寝た。・・・あ、編集長。お早うございます」
 大久保の目線の先、簡易長机下の寝袋から一人の娘が這い出してきた。
年のころは二十歳前後。しなやかな体躯の随所に見られる筋肉の隆起は、絶え間ない鍛錬の証。
短めの黒髪は寝ぐせなのか元々なのか毛先があちこちに跳ねており、やや吊り目で猫科の動物を
思わせる大きな眼は寝起きの充血でまだ赤い。
 「な〜にがお早うだ。お前、取材いってるはずだろうが!いつまで寝てやがんだ」
 「ん、ああー、しまった!すぐ、すぐ行きます!」
 その娘―神楽は、あわてて上着と靴を手に取ると、風のように飛び出していった。
 「はー、やれやれ・・・記者見習いの分際で寝坊するなっての」
 ため息をつく大久保。だが、ここまでの言葉とは裏腹に、その表情は優しい。
 「まったくあの子ときたら。元気がいいのは認めるけど、万事ガサツなのよね」
 「ふふ、でもぉ神楽ちゃんて、胸大っきいよね。令子さんの二倍強!」
 「な、なんですってぇぇ!」
 紛争再発の編集部を後にして、神楽は取材の現場へと急ぐ。駆るのは高校時代から愛用のMTB。
 「しかしよく考えると現場、横浜だよな。電車のほうが良かったかな。ま、いいや」
 ・・・どうやら、考えるより先に体が動いてしまうタイプのようだ。
 数時間後・・・ 
 「ハァハァ・・・ここか。この前失踪した人が、最後に目撃された場所は」
 なんとか目的地に到着した神楽は、さすがにまだ荒い息のまま、周囲を見回してみた。
そこは、とあるスタジアム外側の一角。あたりは人気もほとんどない。
 「別に、何てことない場所だけどなぁ」
 首をかしげ、手近な壁にもたれかかる神楽。その表面は鏡状になっていて、あたりの風景が映っ
ていた。対面の建物や樹木、行き交う車。そして・・・怪しい影!
 「さてと、聞き込みでもしてみるか!んん?」
 歩き出そうとして、首に違和感を覚えた。見れば幾重にも白い糸が絡み付いている。
 「何だ?え、あ、あ、うわぁぁぁぁぁ!」
 次の瞬間、神楽は糸によって背後の壁の中・・・いや、鏡の中へと引きずり込まれていった。

『仮面ライダー 神楽』 第一話 <参>

 (え、あ、何処なんだ、ここは!?)
数秒ほど光の乱舞のする通路を過ぎて後、いきなり視界が開けた。同時に糸の拘束も消えうせ、
体はそのまま中空に放り出される。
 (外に出たのか。おっと危ねぇ!)
 目の端にアスファルトの地面を捉えた神楽は、とっさに身をひねる。その試みは功を奏し、ふん
わりと足から着地することができた。
 「おおっ、決まったぜ!着地成功!いやーわれながら凄いな、今のは」
 自らの身体能力を確認できたせいか、すっかりご機嫌の様子だ。
 「しかし何だったんだ、さっきの糸は?まぁどうでもいいや、取材、取材。ふ〜ん♪」
 鼻歌まで出ている。そのせいか、周囲の変化にまったく彼女は気づいていなかった。ありとあら
ゆるものが、あたかも鏡に映った像のように左右反転していることに。
 「お、誰かこっちへ来るな。よーし、ちょうどいい」
 神楽は近寄ってくる人影に声を掛けた。
 「すいませーん、ちょっといいですか?あ、えーと、コスプレの人?」
 ・・・その人物は、左右に分かれた頭を持ち、その眼、その口元は蜘蛛そのものだった。
 「キシャーッッ!」
 「え、うわ〜!!」
 軽く体当たりされただけなのに、神楽の体は跳ね飛ばされて宙を舞った。
 「う、っく、痛てて・・・な、何しやがんだ」
 失神寸前だった。ふらつく足で立ち上がる神楽に、そいつはゆっくりと歩み寄る。カチャカチャ
と音を立てて開閉する顎からは、唾液が滴っている。喰おうとしているのだ、彼女を。
 「あ、う・・・」
 ついに力尽きたか、神楽の体はゆっくりと相手めがけて倒れこむ。自ら身を捧げてくる餌にそい
つが歓喜した瞬間、彼女の顔に不敵な笑みが浮かんだ。
 「てやっ!」
 倒れると見えた体躯はそのまま宙返りし、回転による威力を込めた足裏が、敵の顎先に炸裂!
 「あ、クッ、痛ぇぇ〜」
 ・・・しかし、悲痛な声をあげたのは、逆転の一撃を放ったはずの神楽だった。

『仮面ライダー 神楽』 第一話 <四>

 (硬い。重い。なんか銅像にケリ入れたみたいだ。こいつ、人間じゃないのか!?)
 人ならぬ生き物―モンスターは、獲物のささやかな抵抗をあざ笑うように首を振ると、彼女の両
肩を掴み、引き寄せた。
 「や、やめろ。畜生、く、く」
 必死に振りほどこうとあがいても、びくともしない。膝蹴りを何発も打ち込んだが、効果はない。
 (な、何なんだ、こいつは!喰われる?死ぬ?いやだ、やだ!)
 ついにモンスターは、怪しくうごめく口元を彼女の首筋に近づけた。
 「イヤァァァァァ〜〜!」
 びくん・・・!
 神楽の口から何年ぶりかの娘らしい悲鳴があがったのと同時に、モンスターの体が痙攣した。掴
んだ手も緩み、神楽はその場に尻餅をつく。
 「な、な、何?」
 その姿勢のまま後ずさる神楽。見ればモンスターは直立不動。しかしその腹や胸からはいつの間
にか、反りのある刃物の切っ先が生えていた。背後から何者かが貫いているのだ。
 「ウォォォォーン!」
 雄たけびとともに、モンスターの体は高々と差上げられた。左腕一本で、だ。刃物と見えたのは、
その手先の大きな爪だったのだ。モンスターは再び痙攣すると、次の瞬間、轟音ともに爆発した。
 神楽はまじまじと見つめた。爆炎に照らされて立つ、命の恩人の姿を。
体の随所を覆う防具は白を基調に青のライン。素顔を隠す仮面のデザインは、彼女にある動物を
連想させた。
 「・・・猫?」
 とたんにその人物は、ばったりと地に倒れ伏した。
 「え、何?勝ったんじゃないのか?おい、しっかり・・・」
 あわてて駆け寄る神楽。
 彼女はまだ知らない。それがタイガと呼ばれる仮面ライダーであることを。そして自らがタイガ
となって戦う未来を。

『仮面ライダー 神楽』

「やっぱり、胸の大っきい女ってバカなんだ・・・」
「人の話を聞けよ!」
「・・・あんた、もしかして神楽、神楽なの?」
「おい、榊はいったいどーなっちまったんだ!」 
「そんな・・・これが、これがあいつの墓だっていうのか!!」
戦わなければ、生き残れない!

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