仮面ライダー
【MKAS】
【沖一也 仮面ライダースーパー1】

 仮面ライダースーパー1、悪魔元帥を倒し、地球に平和を取り戻した彼はジュピタースーパ
 ー1で宇宙へと旅だち、月面開発を行っていたが、その計画は中止となってしまった。バダ
 ンとの戦いがおわり、沖一也は再び宇宙開発の夢を果たす為に国際宇宙開発研究所へと
 入った。だが、2度も壊滅的な状態に陥った研究所、彼等は宇宙ヘ旅だった。目指すは月、
 一度は費えた夢を、もう一度果たす為、彼等は星の海へと飛び立ったのであった。ゴルゴム
 が滅びた少し後の出来事であった。
「地球…か。」

 一也は地球を眺めていた。今は遠い故郷であるが、いつか必ず帰る場所、彼はそう思って
 いた。彼の部屋にセルゲイが入ってきた。セルゲイとはまた同じ班に属していた。
「セルゲイ班長!何かようですか?」
 彼のセルゲイに対する態度は以前とあまり変わらない。セルゲイも一也が堅苦しい奴だ。と
 思って対して気にとめていない。そんな事は小さな事だと…この宇宙にいると心からそう思
 う。もう彼が地球にひかれていく事はまずないだろう。息子や妻とも定期的にビデオレターを
 やりとりしている。
「いや、退屈凌ぎに寄ってみただけだよ。お前こそ何してたんだ?」
 一也は窓の外から地球を眺める。その目は幼い子供が何かに憧れを抱くような目をしていた。
 彼の魅力、そして力となったのは夢に向かって突き進むその純粋な心なのかもしれない。

「遠く輝く勇者の星を…眺めていたんです。」
 一也にとって…人類にとっての故郷、地球という星、そこには正に、地球を守る為に戦い続
 けた勇者達がすんでいた。
「そうだな、あの星を守ったのはお前のその五つの腕だな。正にお前は勇者って訳だ。」
「そんな事ありません。平和を愛する気持ちがあれば、人類1人1人が勇者になれます。」
 一也はそう言った。事実、彼は多くの人達に支えられてここに至る。赤心寺の人々…ジュニ
 アライダー隊、チョロ、おやじさんこと谷源次郎…そしてハルミ。皆の支えがあったから、自
 分はここへ来れたのだ。

(みんな…元気でやっているかな?)
 一也は再び地球を見つめた。セルゲイはニッと笑った。
「へっ、そうかい。おっと俺は班長会議の時間だ。ちょっくらいってくるぜ。」
 そう言ってセルゲイは部屋から出ていった。一也はしばらく地球を眺めたあと、トレーニング
 ルームで体を鍛えていた。すると1人の男が入ってきた。彼の名は阪本拳一、一也と同じ、
 惑星開発用の改造人間である。
「一也、お前も来ていたのか。」
 拳一は笑顔で一也を迎えた。また、一也も同じように拳一に笑顔で返事を返す。

「拳一、お前もトレーニングか?」
 実は一也と賢一は幼い頃一緒の学校、一緒のクラスで、仲が良かった。将来お互いに宇
 宙飛行士になる事を誓い合った仲だったが、拳一の父親が死んでから彼は転校してしまっ
 た。それからしばらくお互いに合う機会がなかったが、今回のプロジェクトで偶然再会、しか
 もお互いに改造人間となっていたのであった。
 2人はしばらくトレーニングを行った後、互いに汗をふきながら談笑していたが、やがて拳一
 が時計を見て自分達が月面探索を行う時間になったので、外へと続く扉の前へと立ち、そ
 れぞれの変身ポーズをかまえた。
「変身!」
「変身!」

 2人は仮面ライダースーパー1、サイボーグS2へと変身した。S2は赤いボディに銀色のラ
 インが入った姿をしていた。スーパー1はブルーバージョンにまたがり、S2はレッドバージョ
 ンに乗って二人は月面を探索に出た。こんな事をおこなうのも1度襲われた事があるからで
 ある。このプロジェクトには他に多くの改造人間が参加していて、月面基地には他に3人の
 惑星開発用の改造人間が待機している。
「今日も以上はないな。」
 月には兎はいない。だが、そこに人類の夢がある。希望がある。たとえ単純な作業であろう
 とも、退屈な仕事であろうとも、彼等は与えられた仕事にけちをつけない。何故なら、この
 広大に広がる宇宙…近いようで遠い地球…その美しい光景を見れば、小さな悩み等吹っ
 飛んでしまえた。

「なあ一也、お前の両親、事故でなくなったんだよな?」
「…ああ、俺はそのあと、ヘンリー博士に育てられた。」
「…こんな事いうのもなんだけど…お前がうらやましいよ。俺は両親の反対を押しきって宇
  宙に来て、泣かせてまで改造手術をうけたけど…お前は違うもんなぁ…」
「違う?」
 不思議そうに首をかしげるスーパー1。
「ああ、お前は両親の夢を受け継いで…そして皆に期待されて…やっぱり特別なんだよ。」
  ビー…ザザー
 そんな時、2人の脳波に通信が送られてきた。仲間の改造人間、S4からの連絡である。し
 かもオペレーターを通してではなく、直接的に脳波へと通信が送られてきたのである。

「こちらS4!基地が…襲われている!」
 仲間の1人で1番若手のS4、彼が慌てた様子でスーパー1とS2に通信をいれてきた。
「何!?基地は大丈夫なのか!?」
 S2が慌てて返信する。
「それが…基地は無事なんだ。奴等は人間だけを襲っている…来た!とおお!」
 そこで通信は切れてしまった。二人は大急ぎで基地へとマシンを走らせた。月面に砂ぼこり
 を撒き散らし、青と赤のマシンが疾走する。
「今度計画が失敗したら…もう人類は宇宙への夢を持たなくなるかもしれない!」
 実際今度この計画が失敗すれば、2度目の大損害となる。そうなれば、もうどこの国も宇宙
 開発等は夢物語程度にしか扱わないだろう

「そんな事はさせない!俺と…仮面ライダースーパー1がいるんだ!絶対にさせない!」
「拳一…そうだな、俺達で守ろう!人類の夢を!」
 2人の脳裏に思い浮かぶのは、遠き日の思い出…宇宙飛行士になる契りを結んだあの日
 の自分達の笑顔…
「俺達が昔夢見たように!子供達に輝ける未来をつくるんだ!」
 基地に侵入したのはクライシスから送りこまれた怪人だった。怪魔ロボットスペースギンドで
 ある。彼の任務は人間を抹殺し、基地をのっとってクライシスの前線基地につくりかえる事に
 あった。まだ彼等の存在は南光太郎さえも知らない。
「う…俺のマシンガンアームが効かねえ!」
「俺の衝撃集中爆弾も…」
「化け物だこいつは…」

 歴代のメカニックライダー達の能力を模して作られた3人の戦士達、それぞれ青い体をして
 いた彼等の体は、赤い血と破壊されたメカによって赤黒く見えた。だが彼等も人類の夢を
 背負って戦う正義の戦士である。
「負けられっかよおお!ライドルホイップウウウ!」
「ドリルアームッ!」
 2人の戦士が最後の命を輝かせ、渾身の一撃を放つ。その体は太陽に輝かされ、元の青
 い姿へと戻っていくように見えた。2人の攻撃がスペースギンドの防御した両手に突き刺さ
 る。しかし…
「排除する」
 スペースギンドは右手をかざし、レーザーを発射、S4とS3を一瞬で焼き殺した。

「う…うおおおお!」
 無駄死にすると解りきっていても、彼は後に退けなかった。彼の後ろには、人類全体が遥か
 昔から夢見てきた物を現実に変えられる力がある。それを守る為、彼は逃げる訳にはいか
 なかった。電磁ナイフで斬りこんでS5、スペースギンドの目が赤く輝き、彼から見たS5は、
 まるで血に染まっているように見える。電磁ナイフは、右手の手の平に突き刺さったが、そこ
 までであった。スペースギンドは、ガチャガチャと駆動音を鳴り響かせんがら、左手をかざし
 てチェーンナックルを発射してS5の胸を貫いたのであった。
「か、かかったな…」
 だが、S5は勝ち誇ったように、仮面の下でフッと笑ったのであった。

「…?」
 S5は体中のエネルギーを開放しながら、両手でスペースギンドの顔にもろ手打ちを放った。
 そして、最後の命を輝かせるように、凄まじく、そして美しい青い光りを放ったのである。
「ウルトラ…サイクロオオオオン!」
 S5は、銀の勇者に自らの夢を託し、自爆したのであった。そう、彼もまた、地球を守る為に
 戦った誇り高き勇者なのである。その爆発が巻き起こした砂ぼこりは凄まじく巻きあがり、月
 面に新たに一つのクレーターを生み出してしまった程の威力の技であった。だが…その煙
 が晴れた中から、ゆっくりと大きな影が現われたのであった。刺々しいその赤い目が、ギラリ
 と輝き、数100m離れた場所から聞こえる爆音のする方向へと向かい出したのだ。そして、
 スーパー1とS2の2人は月面基地へと到着しつつあった。が、仲間達の信号は完全に途
 絶え、それは3人の勇者の死を意味していた…

「拳一!君は皆の無事を確認してくれ!助けが必要なら助けてあげてくれ!」
「わかった!」
 レッドバージョンは月面基地の中枢部へと向かって行った。するとそこへ、彼等の1、5倍は
 あるだろう大きさの目かが立ちはだかる。
「たああ!」
 だが、それをジェット噴射させてかわし、先へと進むS2。振向いて追おうとするスペースギン
 ドの前にスーパーライダー、仮面ライダースーパー1が立ちふさがる。
「待て!貴様何者だ!?バダンか!?」
「クライシスの怪魔ロボット、スペースギンド、邪魔者は排除」

 スペースギンドは足がジェットローラーになっていた。それをつかって一気に間合いを詰め
 ようとして突っ込んでくるが、スーパー1はブルーバージョンに乗って逃げ出す。なるべくス
 ペースギンドを月面基地から遠ざける必要があったのだ。思ったとおり、スペースギンドは
 後をつけてくる。スーパー1は基地からだいぶ遠ざかったのを確認してブルーバージョンを
 停止させて降りた。
「いくぞ!とお!」
 スーパー1はジャンプしてパンチを放ったが、地球の物とは違う鋼鉄で出来たボディは硬く、
 全く攻撃を受けつけなかった。逆に右手のレーザーで体の表面かすめられ、反転して距離
 をおいて策を考える。

「あいつも機械なら電気に弱いはずだ。チェーンジ!エレキハンド!」
 スーパー1のベルトが輝き、腕が青くなり、エレキハンドへと変化した。スーパー1はその腕
 をスペースギンドに向かってかざした。
「エレキ光線発射!」
 スーパー1は両腕からエレキ光線を発射、スペースギンドにエレキ光線が直撃した。しかし、
 スペースギンドはその電流を逆にすいとってパワーアップ、目からビームを発射した。
「ぐわああ!」
 完璧にダメージを追わせたと思ったスーパー1は油断していた。ビームが左足に直撃し、左
 足が動かなくなってしまった。ジリジリと詰め寄るすスペースギンド、スーパー1は絶体絶命
 の窮地に陥った。

「一也あああ!」
 だがレッドバージョンに乗ったS2が間一髪スーパー1をマシンに乗せ、基地へと急いで戻
 って行った。レッドバージョンの最高スピードの方が相手のジェットローラーよりも速かった。
「一也!あいつを倒せるのはお前だけだ!早く体を修理してきてくれ!俺は時間を稼ぐ!」
「頼んだぞ、生きて会おうぜ拳一!」
 スーパー1は物につかまりながら基地へと入っていった。間もなくしてスペースギンドが到着
 し、S2に狙いを定めた。
「排除…排除!」
 スペースギンドは目からビームを発射するが、拳一も空手を少々習っていたので他の3人よ
 りは強い。それでも三十分と持たないだろう。
「うおおお!」
 月面に、1人の勇者の声が響き渡った。

 一也はチェックマシンの光線によって身体機能を回復させ、精神を集中させ、カッと目を見
 開いた。迷いはない。恐れもない。ただ友を救う為に戦うのみ!
「待ってろ拳一!俺はもう…誰も失わないぞ!……変!」
 一也は右手を右斜め上、左手を左斜め下に伸ばし、右手をまげて前に出し、左手で右手の
 肘をおさえ、両手を開いて甲と甲をあわせて前につきだし、180℃回転させた。
「身!」
 桁が違う強さであった。恐らくS2も、ショッカーからドグマ怪人くらいまでの怪人とならかなり
 優勢に事を運べたであろうが、相手が強すぎるのだ。

「負けるか…パワーハンドだ!正拳突きぃ!」
 S2は渾身の力をこめてスペースギンドの胸部を殴った。さすがにこれは強烈であった。さし
 ものスペースギンドもよろめいたが、チェーンナックルでS2の体を縛り、動けなくしてからビ
 ームを連射、一方的に痛めつけた。
「ぐわあああ!」
 立派に抵抗して時間を稼いだS2の腕からゆっくりと力が抜けていってしまう…S2も死を予
 感した。圧倒的な力の差…決して侮ってかかったわけでも、身体異常があった訳でもない。
 ただ相手が強すぎたのである。
(俺の夢も……ここで終わりか…?)
 だが、薄れゆく意識の中で、S2の目にはっきりと映る者があった。銀色のボディ、青いバイ
 クに乗った勇者、そう、仮面ライダースーパー1の勇姿を!

「とお!」
 スーパー1はブルーバージョンから飛び降りて鎖をキックで断ち切った。S2は鎖から逃れ
 てすぐ、足手まといになるのを嫌って逃げ出した。もう彼には戦闘を行なう力も残っていない。
 あとはただひたすらに彼の勝利を願うのみである。
(頼んだぞ一也…仮面ライダースーパー1!)
 S2は側にとめてあったレッドバージョンでその場から離れて行った。赤い車体が太陽光に
 照らされ、地平線の彼方へと消えていった…やがて、スペースギンドの赤い目が、深い暗
 闇の中でゆらりと光った。戦闘態勢に入ったのである。
「貴様は仮面ライダーブラックではないな?データにもない。」
 スペースギンドの電子頭脳には、10人ライダーの情報は入っていない。恐らく、ゴルゴム進
 攻時に表立って戦いをおこなわなかった彼等のデータは入力されていないのだろう。

「そのデータは役にたたないな。俺の名は、仮面ライダースーパー1!」
 スーパー1はジャンプして1回転、腕をパワーハンドへとチェンジさせてスペースギンドの頭
 を思いきり殴った。赤い拳が燃え盛る炎の如く唸りをあげて、人々の夢を蝕む邪悪な機械の
 塊に炸裂する。
「メガトンパンチ!」
 脳に値する部分を破壊され、スペースギンドは暴走をはじめた。見境なくビームやレーザー
 を発射しまくる。もう自我意識も命令を受け取る機能もなく、本当にただの怒れる鉄くずとなり
 さがってしまったのである。
「…ここには人類の夢がある…だから…”俺達”はそれを守る!とお!」

 人類の夢を守っているのは自分だけではない。S2、S3、S4、S5…それだけではない。こ
 こに集まった…人類の夢の集まった全ての人々、スーパー1は、彼等の想いをその拳にの
 せ、夢を打ち砕かんとする者と戦いつづける。それが、仮面ライダー9号の信念なのだ。
 スーパー1はジャンプ、その美しい銀色の体を輝かせながら1回転し、スペースギンドの頭
 を蹴って後ろへと回り込んだ。砂ぼこりを舞いあがらせながら地面に着地し、敵の方を向い
 て拳をかまえる。
「とお!」
 そして、正拳突きでスペースギンドの鋼鉄よりも硬い素材でできているボディを打ち砕く。い
 くら改造人間といえども、流派、赤心少林拳と、彼の日頃のトレーニング、彼を作ってくれた
 人達の思いがなければこんな事はできなかった。

「とおおお!」
 スーパー1は反転して月面を描いた。そして、大きな月面の上に立つ、たった一体の怪人
 めがけて、急降下して行く。広い広いこの宇宙…無限に広がる黒い空間…人類はどこまで
 たどりつけるのだろうか?…きっとどこまででもたどりつける。何故なら…
「スーパーライダー!げつめぇぇぇぇん!キィィック!」
 スーパー1が、いや…仮面ライダーと呼ばれる戦士達の想いを受け継ぐ者達がいる限り、
 人類の可能性は無限に広がるであろう。今、人類の可能性を閉ざさんとする存在は、正義
 の戦士、仮面ライダースーパー1のスーパーライダー月面キックによって滅ぼされる。銀に
 輝く無敵の足から繰り出された月面キックは、スペースギンドという悪の存在の体を粉々に
 粉砕、スペースギンドはその美しい月面の上で機能を停止したのであった。

 ―奇跡的に被害者は改造人間の3人だけであった。彼等が命を賭けて人類の夢を守った
 のである。
「彼等こそ本当の勇者だよ。」
 ありがとう…君達こそ真の勇者だ。一也も拳一もそう思う。力無き正義は無力…確かにそうか
 もしれない…だが、正義を愛する心が無ければ、何かを守る事などできるはずがない。今、一
 也は、1人の人間として心から、人類の為に戦ってくれた仲間達に「ありがとう」と何度も繰り
 返していたのだった。

「…彼等のわずかに残った遺体は銀河に放つんだって?」
 彼等の体からはずれた機械の部品…どれが誰の物かまではわからないが、残ったその部
 品は、カプセルの中へといれられ、宇宙へと飛ばされる事となったのであった。
「ああ、俺達に先んじて、彼等に見てきてもらうのさ。このどこまでも続く宇宙を…」
 彼が助かったのはスペースギンドの握力が彼等によって破壊されたという事など、誰にもわか
 るはずがなかった。全ては、遠く輝く夜空に輝く、美しい月での出来事なのである。
 戦え沖一也、負けるなスーパー1!彼は守る!人類の夢を!その五つの腕で守る…
 五つの愛の腕で…

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